位牌の選び方 【更新日】
故人のお位牌を複数作る位牌分けを慣習とする地域が増えています
お位牌とは、亡くなった方の戒名や没年月日などを記したものです。
見た目は木の板なのに荘厳な空気を漂わせている理由は、お位牌にはご先祖や故人の霊魂が宿っているとされるからです。
ご家庭のお仏壇に祀られたお位牌の前には、毎日お花やお水などをお供えしローソクに火を灯し香を焚いて故人の霊を供養します。
ご家族はご先祖や故人を偲び、お位牌に手を合わせて今日あったことを報告したり、今日一日の無事を感謝したりして故人と語らいます。
通常先祖代々のお位牌は、本家のお仏壇に祀られるものです。
ご実家のご両親が亡くなるとお位牌はお仏壇と共に後継者が管理し、更にその子どもへと引き継がれていくのです。
しかし、このお位牌を分ける「位牌分け」と言う慣習があるのをご存知でしょうか。
「位牌を分ける」と言うのは、一体どういう意味なのでしょう?
この位牌分けはどこでも行われる訳ではなく、どうやら一定の地域でされる風習のようなのです。
この記事では、位牌分けの意味や特徴、位牌分けを慣習とする地域や位牌分けの手順についてご紹介いたします。




目次
お位牌は通常は故人ごとに作られますが位牌分けの他にも夫婦位牌や回出位牌というものがあります
お位牌というものは、基本的にひとりの故人に対してひとつ作られますす。
ちなみに、お位牌を数える時には個や本ではなく「柱(はしら)」や「一基(いっき)」が使われます。
ひとり1柱が原則ですが、実際には複数の故人のお位牌を1柱にまとめたり、反対に一人の故人のお位牌を数柱作るということもあるのです
回出位牌の場合
回出位牌 (くりだしいはい)とは、箱型をしていて札板が10枚程収納できる少し大きなサイズのお位牌です。
繰出位牌と書かれている場合もありますが、読み方は変わりません。
最初から回出位牌をお位牌として選ぶことはまず無く、ご先祖から受け継がれたお位牌の数が増え、お仏壇が狭くなってきた場合などに買い替えられます。
他にも「故人がご先祖の仲間入りをすると言われる三十三回忌」のタイミングで他のお位牌と一緒に回出位牌にするという方も多いようです。
中には七回忌や十三回忌、もしくは五十回忌を一つの節目としてお位牌をまとめられる方もいらっしゃいます。




夫婦位牌の場合
ご夫婦のお位牌を連名で1柱にしたものを「夫婦位牌(めおといはい)」と言います。
夫婦位牌には、ご夫婦の戒名や命日などを並べて文字入れできるよう「巾広位牌」が使われます。
夫婦位牌を作るのはいくつか理由があります。
故人の遺言であったり、仲睦まじかったご両親が亡くなった後や、別のタイミングで作ったご両親のお位牌の見た目の差がないようにと、子どもたちが夫婦位牌を選ぶ場合もあります。
このように回出位牌や夫婦位牌の時には、複数の故人のお位牌を1柱にまとめるのですが、逆に一人の故人のお位牌を数柱作るのが「位牌分け」と呼ばれるものです。
位牌分けでは本家や分家そして男女の区別なくご両親のお位牌が子ども達全員に分けられます
位牌分けとは?
一人の故人のお位牌を複数作り、子供たち全員に配ることを「位牌分け」と言います。
通常お位牌は、その家の跡継ぎ(大抵は長男)が所有し管理していくことになります。
祖霊に対する祭祀は昔はとても重要なことでしたから、一族一家にとって大切なお仏壇の管理を家長や跡継ぎが担当したのです。
お位牌は分家ではなく必ず家長のいる本家で祀られるものでした。
しかし、この位牌分けでは本家・分家の区別がなく、故人の子供たち全員がお位牌を所有することになるのです。
位牌分けの特徴
では、位牌分けにはどういった特徴があるのでしょうか?
1. 一人の故人のお位牌が、分配される子供の数だけ複数作られる
2. 子供たちは男女や長幼の区別なく、さらに実子、養子、婚出、分家などのも問わず、全員が等しく故人の祀り手となる
3. お位牌が分けられるのは既婚者のみで、未婚の子どもは位牌分けの対象から外れる
4. 婚姻している子供の家では夫の両親の位牌と、妻の両親の位牌が共に祀られる
5. 一家のお仏壇には、その家のご先祖である父系的位牌と、分与された母方系位牌が祀られる
ただし他家に嫁がれた方には、位牌分けは基本的に行わないとされております。
宗派やお寺さまが変わると、嫁ぎ先の家でお位牌を巡って揉め事になる可能性があるからです
しかし、この位牌分けというのは、果たして一般的なものなのでしょうか?




位牌分けはもともと一部の地域の風習でしたが現代では他の地域でも行われるようになっています
もともと位牌分けとは長野県、静岡県、山梨県などの中部地方、あるいは北関東の群馬県などの一部の地域で行われていた慣習だそうです。
しかし最近では次のような場合には、地域に関係なく位牌分けが行われていると言います。
現在位牌分けがされるケース
生活スタイルや宗教や供養に対する考えが変わり、慣習よりも個人の意見が尊重される現代では、様々な理由で位牌分けがされるようになっています。
1. 実家が遠方にあり、なかなか祖先や両親の供養に行けない
2. 後継者ではないが、自宅で日常的に両親の供養をしたい
3. 故人を偲び、心の拠り所とするために自宅にお位牌を持っていたい
4. 分家だけれど、本家で祀るご先祖のお位牌をもちたい
おそらく最も多い理由は1と2のケースでしょう。核家族化が進んだ昨今では、郷里から離れた場所で暮らしている方が多く、一族が同じ家に住んでいる事の方が珍しいでしょう。
3の場合は最近よく見られる「手元供養」のための分骨と共にされることが多いようです。
手元供養とは、故人を身近に感じていたいという気持ちから生まれた自宅供養で、位牌分けをしたお位牌は、故人のご遺骨の一部と共にご自宅のお仏壇に祀られ供養されます。
4のケースは、昔ながらの慣習が強く残る一部の地方で見られるようです。
なお、お仏壇にお位牌を祀らない浄土真宗では、どこの地方でも位牌分けは行っておりません。
位牌分けの前には文字入れをしたお位牌を人数分用意し開眼供養をします
位牌分けはいつ行ってもいいのですが、法事のタイミングで行うことが多いようです。
位牌分けの準備
まず、位牌分け用に人数分のお位牌を揃えます。
仏壇店などでお位牌を購入する際には、各お位牌に故人の戒名、没年月日、俗名、享年を「文字入れ」してもらいます。
お位牌への文字入れには少し時間がかかるので、早めに手配しておく必要があります。
開眼供養(かいげんくよう)
購入しただけのお位牌はただの木の板なので、「開眼供養(かいげんくよう)」という儀式をして、菩提寺のご僧侶に故人の魂を入れていただきます。
その後位牌分けをされた方々は、故人の魂が宿ったお位牌をご自宅へ持ち帰り、お仏壇に安置して供養します。
なお位牌分けをする際には、事前に菩提寺のご僧侶に相談されることをおすすめします。
少し前までは、位牌分けは一部の地域だけで行われていた風習でしかありませんでした。
しかし、家族が別々に暮らすのが当たり前になった昨今、ご両親を祀る場所がひとつしかないというのもおかしな話なのかもしれません。
引っ越して遠方住んでいる子供達にとっては、忙しい生活の中で実家に手を合わせにいくのも大変なのです。
ご両親を供養する機会を子供達に等しく分け与える「位牌分け」は、手元供養の分骨と同じように、現代社会に適した供養方法なのではないでしょうか。



