位牌の選び方 【更新日】
神道での位牌「霊璽(れいじ)」と仏教の位牌のルーツは同じです
仏教でのお位牌は亡くなった方の霊魂が宿る「依り代(よりしろ)」として、お仏壇に安置されるものです。
ご遺族は毎日お位牌の故人に語りかけながらお供えをし、生前のように寄りそわれていると感じるのです。
残された家族にとってのお位牌は、故人の象徴であり日々の生活の中で心の支えとなってくれる存在なのです。
しかし、ご遺族が仏教徒ではない場合はどうなるのでしょう。
たとえば、神道の場合のご先祖様や故人の霊魂の居場所は…?。
よくお位牌に対して使う「依り代(よりしろ)」は、神道の考え方のはず。。
つまり、神道にもお位牌が…?
この記事では、神道におけるお位牌の代わりになるもの、その選び方、戒名の入れ方、そして祀り方についてご紹介いたします。
目次
神道におけるお位牌「霊璽」は守護神となった故人の依り代
実は神道にも、仏教のおけるお位牌にあたるものが存在するのです。
神道における故人が宿る依り代は「霊璽(れいじ)」と言います。
この霊璽に御霊(みたま)を移してお祀りすることで、故人はその家の守護神として子孫を守ってくれると言われています。
霊璽の由来は中国の儒教にあると言われています。
儒教では先祖の霊魂がその家を守っていくという思想があり、祖先の霊を移した御霊代(みたましろ)を祀って祖先祭祀を行っていました。
その祭祀で使っていた、ご先祖や両親の姓名・位官を記した木の板を「位版(いばん)」、「神主(しんしゅ)」、「木主(もくしゅ)」と呼んだそうです。
これが禅僧によって鎌倉時代に日本に伝えられましたが、一般化されたのは江戸時代になってからだと言われます。神道では「霊璽」、仏教では「お位牌」として受容されたのです。
霊璽は守護神となった故人の依り代、いわば神の依り代です。ですから神道の中でも、最も神聖なもののひとつなので、丁寧に扱うようにしましょう。
神道の霊璽と仏教のお位牌は形も扱い方も非常によく似ています
霊璽(れいじ)の素材と形状
霊璽もお位牌も由来が同じなので、非常によく似た形をしています。
ただ、お位牌は漆などで色が塗られていることが多いのですが、いっぽうの霊璽は完全に白木の造りのまま。
霊璽には神鏡がついたものや「錦覆(にしきおおい)」と呼ばれる金襴の覆いが被せてあるものもあります。
「一体型」と「回出型」の霊璽
お位牌と同じように、通常は霊璽ひとつにつき霊号が書かれた木主がひとつ入っている「一体型」を使用します。
しかし複数の故人の霊璽を置くスペースがない場合は、10名分の木主を入れることができる「回出型(くりだしがた)」の霊璽を使用するところも仏教での「回出位牌(くりだしいはい)」と同様ですね。
霊号(れいごう)
霊璽の正面には蓋があり、それを開けると「○○○之霊」という文字が書かれた「木主(もくしゅ)」が入っています。
この「○○○」の部分には「霊号(れいごう)」という仏教の戒名(かいみょう)にあたる、故人の死後の名前が入ります。
霊号の文字入れ
神道では、亡くなった人は「霊号」という御霊の名前を頂きます。
この霊号は、生前の名前の下に「称名(たたえな)」と「尊称(そんしょう)」を重ねて書くのが一般的です。
称名は、その人の性別や身分、年齢を表す言葉です。
成人男性なら「大人(うし)」、成人女性なら「刀自(とじ)」が使われます。
そして称名の後にくる尊称には「命(みこと)」が使われます。
故人が成人の場合では、名前の後ろに「大人之命(うしのみこと)」「刀自之命(とじのみこと)」をつけて書かれます。
木主の裏には故人の誕生日の他に、亡くなった年月日、亡くなった年齢が「令和○年○月○日帰幽 享年○歳」という形で記載されます。
霊号の称名は亡くなった方の年齢や地域で変わるので注意しましょう。
神道の霊璽は神棚ではなく「祖霊舎(それいしゃ)」に祀られます
では神道で故人の依り代である霊璽とは、どこに祀るものなのでしょうか。
仏教のお位牌の場合と比べてみましょう。
お位牌とお仏壇
仏教(浄土真宗以外)において、お位牌はお仏壇に安置されるのが一般的です。
お仏壇はご本尊(宗派ごとの信仰の対象)が祀られているのですが、その一段低い位置にお位牌を祀ってお参りします。
神棚と霊璽と祖霊舎
神棚と祖霊舎の役割の違い
神道におけるお仏壇の代わりと言えば「神棚」です。
しかし霊璽は神棚には安置しません。
というのも神道において祖霊は家の守護神であり、神棚に祀られる神様とは別の存在なのです。
そのため霊璽を安置する場所として、「祖霊社(それいしゃ)」を作る必要があります。
祖霊社はその名の通り「祖先の霊を祀る社」のことで、「神徒壇(しんとだん)」とも呼ばれます。
霊璽の祀り方
神道では、神様は直接目にしてはいけないものとされているため、神の依り代である霊璽は祖霊社の奥に安置し、内扉を閉めておく必要があります。
祖霊舎は吉祥の方角である「南か東」に向け、神棚よりも低い位置に設置します。
そして霊璽を安置した内扉を閉め、その前に鏡を据えて、米や塩、水、酒、榊、灯明、供物等をお供えします。基本的には外扉は常に開けておきます。
祖霊社はお仏壇と比べてずっと小さいので、祖霊舎ひとつにつき霊璽はひとつしか入りません。
ですから複数名分の木主が収まる回出型の霊璽がよく使われます。
もしくは、霊璽を神社に建てられた合同の祖霊社にお祀りすることも可能です。
神道における霊璽もお位牌と同じく忌明けまで正式には祀られません
白木位牌と本位牌
お位牌には葬儀の際に使用する「白木位牌」と、四十九日以降に使用する「本位牌」が存在します。
白木位牌は仮位牌とも呼ばれ、故人が亡くなった後に急遽作られるものなのですが、本位牌は一連の儀式が終わった後に本格的に作った位牌です。
仮位牌から本位牌へ拝み替えをする際には、お位牌から魂を抜いて移動させる必要があります。
そのために「閉眼供養(へいがんくよう)」「開眼供養(かいがんくよう)」と呼ばれる儀式が行われ、その後本位牌はお仏壇に祀られ、白木位牌はお寺に納められます。
仮の霊璽と正式な霊璽
一般的ではありませんが霊璽もお位牌と同様に、葬儀の際に仮の霊璽を使用することがあります。
その場合は五十日祭まで仮の霊璽を使用し、正式な霊璽を用意したら仮のものは神社にて焼納します。
仮のものでも正式な霊璽でも、忌明けを迎えるまでは祖霊社に祀ることはしません。
神道では、五十日祭の次の日に「清払いの儀(きよばらいのぎ)」が行われ、忌明けとなるのですが、そこでようやく、霊璽は祖霊社へとお祀りされるのです。
神道での霊璽へのお参りは「二拝二拍手一拝」
故人を偲び供養するための時間は毎日とりたいもの。
そこで重要になるのが、日常的なお参りの方法です。
お仏壇でのお参り
仏教ではお位牌をお仏壇に安置するため、ご本尊と故人を同時に供養しお参りする形になります。
お参りの手順を簡単に言うと、
1. お仏壇の前に正座し、一礼
2. お供え物をお位牌の前に供える
3. ローソクに火を灯し、線香にも火をうつし、香炉にたてる
4. リンを鳴らして合掌
5. ローソクの火を消し、一礼してさがる
という流れです。
このお参りは、できれば朝夕2回しましょう。
神棚や霊璽へのお参り
一方、神道では「神様は神棚」、「守護霊となった故人は祖霊舎」と別々の場所に安置されます。
ですから、「神棚」と「霊璽を安置した祖霊社」の2カ所にお参りしなければなりません。
神棚や霊璽へのお参りの仕方は、神社と全く同じです。
「二拝(2回お辞儀)二拍手(2回拍手を打つ)一拝(1回お辞儀)」が基本です。
ただし、祖霊社へのお参りは神棚の神様へお参りした後に行うようにしましょう。
神道の霊璽(れいじ)は、仏教におけるお位牌とルーツが同じということで、その見た目や役割、扱い方など、かなり似ているところが多いんですね。
お位牌にしろ霊璽にしろ、故人の霊の依り代となる存在です。
どちらも大切に扱って、お仏壇や祖霊舎にお供え物をしてお祀りするようにしましょう。
家族を守ってくれるご祖先や故人の御霊へのお参りは、毎日欠かさずに行うのが大切なんですね。