位牌の選び方 【更新日】
お位牌の文字は故人を表す神聖なもので、書き方には決まりがあります
お位牌(いはい)とは、故人そのものとされ、お仏壇に大切にお祀りされます。
お位牌を作られる際には、文字の配置についての決まりを知り、配置を美しく整えることがとても重要です。
特に初めてお位牌を作られる場合は、慎重にレイアウトを考える必要があります。
とはいえ、仏教の決まりには専門的な部分も多く、調べるのも楽ではありません。
そこで本記事では、お位牌に文字入れする際に大切な知識について詳しくご紹介します。
本記事さえご覧いただければ、基本的な知識を十分に得ることができます。
目次
お位牌に文字入れする戒名(かいみょう)は、5つの要素から構成されます
まず「戒名」とは、仏門に入って仏様の弟子になったことを示すものとして授けられる名前です。
仏教における戒律を守ることをも意味し、敬虔な信者は生きている間に戒名を頂戴してお勤めに励みます。
最近ではひとくちに「戒名」と呼ばれることが多いですが、戒名は5つの要素から構成されています。
なお、浄土真宗では戒律がないため「法名(ほうみょう)」、日蓮宗などでは「法号(ほうごう)」と呼びます。
いずれも、仏門に入った事を意味するものです。
院号・院殿号
戒名の一番上に配置される文字が「院号(いんごう)」と「院殿号(いんでんごう)」です。
これは少し特殊で、寺院に大きく貢献をした方に授けられます。
あまり仏教にゆかりのない一般の方に授けられることはまれですが、社会的に貢献した場合に頂けることがあります。
道号
次に配置される「道号(どうごう)」は、故人を表現する文字です。
故人の生前の仕事や生活、名前などに由来し、まさに故人の生き様を表すものとして記されます。
なお、この部分には宗派によって道号以外の呼び方をする場合があります。
例えば浄土真宗では「誉号(よごう)」、日蓮宗では「日号」です。
戒名
道号の次には「戒名」が記されます。
本来の戒名はこちらを指し、生前の名前から一文字取って授けられるのが一般的です。
位号
戒名の次に「位号(いごう)」が記されます。
こちらは、仏教徒としての位を表します。
置字
戒名の最後には「之霊位(のれいい)」や「位」などの「置字」が記されますが、省略される場合も少なくありません。
戒名には、位号と院号でランク付けがされています
平等を説く教えの仏教ですが戒名には順位があり、その順位は多くの場合お布施の金額で決まります。
これに不信感を抱かれる方もいますが、お寺を存続し、末長く故人を供養するためにも必要な事です。
ここでは、戒名のランクについてご紹介します。戒名のランクは、お位牌の「位号」と「院号」にどの文字が用いられているかによって決まるのです。
位号のランク
まず、位号の3つのランクから見ていきます。
男性の位号をランクの高い順に並べたものがこちらです。
・「大居士(だいこじ)」
・「居士(こじ)」
・「信士(しんじ)」
女性の位号をランクの高い順に並べたものがこちらです。
・「清大姉(せいだいし)」
・「大姉(だいし)」
・「信女(しんにょ)」
院号・院殿号のランク
次に院号・院殿号についてですが、こちらは位号に加えて院号や院殿号が付くことで、位号の最上位よりもさらに戒名のランクが上がります。
お位牌に入れる文字は5種類から構成されます
基本的に本位牌の文字入れは、白木位牌に記されている文字をそのまま仏壇店にお伝えするだけで大丈夫です。
後はお位牌の専門家が、一般的な文字配置で作成してくれます。
俗名
「俗名(ぞくみょう)」とは、元々は仏門に入る前に名乗っていた名前のことを指します。
しかし最近ではほとんどの方が亡くなられてから仏門に入られるため、「生前の名前」という意味合いで使用されることが多いです。
通常は、お位牌の裏面に文字入れされます。
戒名
上で詳しくご紹介したように、ここでは5つ要素をまとめて「戒名」と呼びます。
一般的に、お位牌の文字入れの際には表面に戒名を記します。
しかしこちらも必須ではなく、戒名なしでお位牌に文字入れすることも可能です。
享年(きょうねん)・行年(ぎょうねん)
「享年」は、天から頂いた年数を示します。
「行年」は、この世に生を受けてから何年修業したかを示すものです。
一般的に、この2つはほぼ同じ意味として扱われています。
お位牌でどちらの文字を使うのかは、地域やお寺によって異なる場合が多いです。
そのため、白木位牌・ご先祖様のお位牌に書かれている通りの文字をお書きになると確実です。
また、故人の享年(または行年)を表す際にも、使われる文字に種類があります。
・「○○才」
・「○○歳」
こちらも、白木位牌かご先祖様のお位牌と同じ漢字を選びます。
没年月日
「没年月日」は、故人がお亡くなりになられた日付です。
ここまで見てきたように、基本的にお位牌に文字入れされる際には白木位牌を参考にします。
しかし、白木位牌の没年月日の後に付くことの多い「寂」や「没」という文字は、本位牌では省略されるのが一般的です。
もっとも、ご先祖様のお位牌にどちらかの文字が使われている場合は、これから作るお位牌にも使うと統一感を出せます。
梵字・冠文字
戒名の上の部分に記される「梵字(ぼんじ)」「冠文字」は、それぞれの宗派のご本尊様を表すものとされます。
こちらは一般的な例ですが、地域や寺院によって大きく異なります。
・「空」という冠文字(曹洞宗)
・「妙法」という冠文字(法華宗、日蓮宗)
・「法名」という冠文字(真宗)
・「キリーク」と読む梵字(浄土宗)
・「ア」と読む梵字(天台宗、真言宗)
・「カ」と読む梵字(子供)
梵字は、お位牌に文字入れされる際に必ず記さなくてはならない訳ではありません。
ご僧侶から特に指定されない場合は、仏壇店に「梵字なし」とお伝えください。
「之霊位」は本位牌では省略されます
ここでは、置字について少し詳しくご紹介します。
通常、白木位牌に記されている置字は「之霊位」です。
しかし、故人は四十九日を境に仏門に入り、仏様の世界に行くとされています。
そこで、本位牌では「之霊」が省略され「位」と記される場合が多いです。
例外的に次のお位牌では、本位牌でも「之霊位」の文字を使うのが一般的です。
・戒名なし(俗名のみ)のお位牌
・先祖代々のお位牌
一方で最近では、「之霊位」も「位」も入れない場合が増えてきています。
必須ではない場合もあるので、一度ご僧侶か仏壇店に確認してみるのがおすすめです。
お子様のお位牌に使われる文字は、大人のものと異なります
未成年のお子様のお位牌を作る場合、大人とは位号などの文字が異なるので注意が必要です。
こちらも全ての宗派で統一されているものではなく、一般的なものをご紹介します。
実際にお子様のお位牌に文字入れされる際には、ご僧侶に確認する方が確実です。
・水子(すいじ)
死産した場合は、お位牌に「水子」という文字が記されます。
水子の場合は特に、手元に何も残らない場合が多いです。
そこで、手を合わせる対象としてお位牌を作られます。
・嬰子(えいじ)、嬰女(えいにょ)
1歳未満の子供の場合は、「嬰子」「嬰女」といった文字が授けられます。
男性が嬰子で、女性が嬰女です。
・亥子、亥女
3歳未満の子供の場合は、「亥子」「亥女」です。
男性が亥子、女性が亥女です。
・童子(どうじ)、童女(どうじょ)
18歳未満は、「童子」「童女」と記される場合が多いです。
なお、お子様のお位牌であっても、通常の位号などを用いる場合もあります。
お位牌を作られる際の文字は「彫り」と「書き」から選びます
お位牌に入れる文字には種類があります。お位牌に直接文字を彫る「彫り文字」か、墨で文字入れする「書き文字」の2つです。
ここでは、彫り文字と書き文字の特徴について見ていきます。
彫り文字
最近主流なのは、書き文字よりもこちらの彫り文字です。
「手彫り」と「機械彫り」があり、手彫りの方が完成まで時間を要しますが、高級感のある仕上がりになります。
直に彫っているからこそ出せる、しっかりとした力強い書体が魅力です。
書き文字
書き文字は、上品で味のある流麗な書体が魅力です。
一方で、強くこするとお位牌の文字が消えてしまうことがあるので注意が必要です。
お一人様でお位牌に文字入れされる場合は、お好みでレイアウトが選べます
お一人様で作られるお位牌が、最も基本的な形です。
レイアウトは好みによる場合が多く、お好きな配置を指定できます。
ここで、レイアウトの見本例を見ていきましょう。
最も一般的な形式を想定しています。
・表面
表面の配置は「戒名のみ」か、「戒名と没年月日」の場合が一般的です。
こちらが、特に人気のあるレイアウトです。
1.中心に戒名を据え、その両脇に没年月日を2つに分けて添える
2.中心に戒名のみを記す
・裏面
裏面には「俗名・行年」もしくは「俗名・行年・没年月日」を記すのが最も一般的です。
特に人気のあるレイアウトがこちらです。
1.俗名を中心に、その左右どちらか(もしくは下)に行年を添える
2.俗名を中心に、左右に行年と没年月日を添える
俗名の左右に行年と没年月日を添える場合は、没年月日を高い位置に、行年を低めの位置に配置することでさらに見栄えが整います。
また、既にご先祖様のお位牌がある場合は、そのレイアウトに合わせた方がお仏壇全体として統一感が出せます。
ご夫婦でお位牌に文字入れされる場合は、配置のバランスが大切です
ご夫婦で一つのお位牌に文字入れされる場合、そのお位牌を「夫婦位牌(めおといはい)」と呼びます。
夫婦位牌を希望される理由は、「あの世でも一緒にいたい」というものから「残された家族に負担をかけたくない」というものまで様々です。
夫婦位牌を作られる際には、特にお位牌の大きさが重要になります。
二人分の文字を入れる幅のあるものを選択しましょう。
夫婦位牌の購入のタイミング
ご夫婦が同時に亡くなられることはまずありません。
そのため、夫婦位牌を購入される場合は2つに分けられます。
・ご夫婦がどちらもご存命の間に購入しておく
・どちらかが亡くなられた際に購入する
夫婦位牌の文字配置
夫婦位牌の場合、お位牌には旦那様と奥様、お二人分の文字を記すことになります。
こちらも、文字の配置は基本的に自由です。
しかし、お一人様用のお位牌よりもバランスが崩れやすいため、全体的に見て整った配置にするのがおすすめです。
ここでは、代表的な配置レイアウトについて見ていきます。
・表面
表面の配置は、「戒名のみ」か「戒名・没年月日」の場合が一般的です。
特に人気なのは、この2パターンです。
1.旦那様の戒名と奥様の戒名を中心に据えて、その両脇にお二人の没年月日を添える
2.旦那様、奥様の戒名のみを中心に記す
・裏面
裏面は「俗名・行年」か、「俗名・行年・没年月日」を記すのが一般的です。
特に人気なレイアウトは3パターンあります。
1.中心にお二人の俗名を据えて、その両脇(もしくは下)に行年を添える
2.旦那様の俗名の下に旦那様の行年、その隣に旦那様の没年月日を記し、奥様の俗名の下に奥様の行年、その隣に奥様の没年月日を並べる
3.お二人の俗名を中心に据えて、その下に行年、両脇に没年月日を添える
「交差型」と「真裏型」
お位牌には通常、表面と裏面に文字が配置されます。
特にご夫婦でお位牌に文字入れする場合、旦那様の文字を記す場所と、奥様の文字を記す場所を2パターンから選ぶことができます。
・交差型
その名の通り、真上から見たときにお二人の文字が交差するように配置します。
旦那様の戒名の真裏には奥様の俗名が記され、奥様の戒名の真裏には旦那様の俗名が記されます。
・真裏型
こちらは、よりシンプルな配置です。
旦那様の戒名の真裏に旦那様の俗名が、奥様の俗名の真裏に奥様の俗名が記されます。
これらの配置は特に決まりがある訳ではなく、お好みでお選びいただけます。
夫婦位牌の問題点
夫婦位牌の場合、お位牌には先に亡くなられた方の文字のみが記され、片方は空欄になっています。
そのため、「名前が入るのを待っている」ようで縁起が悪いと感じられる方もいらっしゃいます。
また、ご夫婦で二人目が亡くなられた際にお位牌を仏壇店に預けて文字入れをしてもらいます。
この場合、魂抜きをしないままお位牌をお仏壇から出すことに抵抗を持たれる方がいらっしゃいます。
費用の面でも負担の少ない夫婦位牌ですが、この点には注意が必要です。
その他のお位牌の文字入れについて
お位牌には、少し特殊な種類もあります。
ここからは、ここまで見てきた以外のお位牌の文字入れ・レイアウトについてのご紹介です。
「水子のお位牌」の文字入れ
上でも少し触れましたが、流産したお子様のお位牌を作る際には「水子」という文字を記すのが一般的です。
ここでは、水子のお位牌を作る際の代表的なレイアウトについてご紹介します。
水子のお位牌は、表面にのみ文字入れします。
・「水子之霊位」とのみ記す
・最上部に梵字、その下に「水子之霊位」と記す
・最上部に梵字、その下に戒名と「水子之霊位」を記す
・俗名の苗字に続けて「水子之霊位」と記す
もっとも、流産したお子様のお位牌を作られる主な理由は、お子様の事を思い出すためです。
そのため水子など馴染みのない言葉ではなく、俗名のみで作られる場合が多いです。
「俗名のみのお位牌」の文字入れ
一般的なお位牌には戒名が記されますが、俗名のみのお位牌を作成することも可能です。
俗名のみのお位牌を作る理由は様々ですが、例えば形式的には仏式で葬儀を上げたが信者ではないという場合などが挙げられます。
俗名のみのお位牌に文字入れする際の代表的なレイアウトがこちらです。
・表面
中央に「○○(俗名)之霊位」と記します。
・裏面
没年月日と行年を記します。
「先祖代々のお位牌」の文字入れ
先祖代々のお位牌は、その名の通り多くのご先祖様を一つのお位牌でお祀りするものです。
ご先祖様のお位牌を全てお仏壇にご安置することは現実的に難しいですが、こちらのお位牌を作ることでそれが可能になります。
先裏面はなく、表面中央に「○○家先祖代々之霊位」と記されます。
先先祖代々のお位牌がある場合も、まず初めにお一人様用のお位牌を作るのが一般的です。
そして、33回忌もしくは50回忌の「弔い上げ(とむらいあげ)」のタイミングで先祖代々のお位牌に魂を移します。
「回出位牌」の文字入れ
こちらの回出位牌(くりだしいはい)も、ご先祖様のお位牌をまとめてお祀りする方法の一つです。
お位牌を何枚もご安置できる箱があり、そこに先祖代々のお位牌を札板の形でお祀りします。
外から見える一枚目の表面には「○○家先祖代々之霊位」と記すのが通常です。
また、2枚目以降に収納する札板には、故人の本位牌のレイアウトをそのまま写します。
札板にも種類があり、白木の板に墨書きのものと、漆塗りに金彫りのものから選べます。
お位牌には、このように多くの種類と決まりごとがございます。
基本的には白木位牌のレイアウトを参考にすれば間違いありませんが、本位牌では使わない文字等もあるため注意が必要です。
お位牌はそれ単体のバランスも重要ですが、お仏壇や、他のご先祖様のお位牌との統一感も非常に大切です。
お位牌がお仏壇に調和することで、故人とご先祖様とのつながり、ひいてはあなた自身とご先祖様のつながりを感じやすくなるように思います。
お位牌は故人を供養するためだけでなく、自分の存在についての不思議に思いを馳せる機会を与えてくれるのです。