位牌の選び方 【更新日】
浄土真宗のお位牌の考え方と法名軸や過去帳の扱い方
浄土真宗はそのほかの仏教宗派と比べても、異なる点が多くあります。
なかでも浄土真宗の信者の方がはじめてお仏壇を購入する際に、驚かれるのが「浄土真宗では基本的にはお仏壇にお位牌を安置しない」という点です。
それではなぜ、浄土真宗ではお位牌を用いないのでしょうか?
それにはれっきとした理由があります。
もちろん、お位牌には重要な役目があります。
そのため浄土真宗といえども、お寺様のご意向や、その分派によってお位牌を用いることもあります。
目次
浄土真宗は1700万人の信者をようする日本最大の仏教宗派です
浄土真宗は、「親鸞聖人(しんらんしょうにん)」を宗祖とする仏教宗派です。
文化庁公表の平成30年『宗教年鑑』によると、実に仏教徒の1位と2位を浄土真宗本願寺派(お西さん)と真宗大谷派(お東さん)がしめています。
その他にも真宗高田派や真宗佛光寺派など多くの分派があります。
浄土真宗の各分派を合わせると、仏教徒全体の約20%にも及び、約1700万人が属しています。
仏教の一大宗派といえる浄土真宗は、その他の仏教宗派と様々な違いがみられます。
その中でも、基本的に浄土真宗ではお位牌を用いないという違いがあります。
ではそもそも、お位牌とはどんなものであり、どういう用途があるのでしょうか。
お位牌とは浄土真宗以外の仏教宗派で用いる追善供養のためのものです
位牌は浄土真宗以外の、多くの仏教宗派で用いられる、お仏壇などに安置して故人を祀るためのものです。
お仏壇に祀るお位牌は、大きく分けて2種類あります。
それは「白木位牌(しらきいはい)」と「本位牌(ほんいはい)」です。
葬儀の際には白木位牌を用い、四十九日の法要で白木位牌から本位牌へ移します。
このときお位牌の用途は、故人のご精魂を宿らせるための器としての役割があるとされ、「追善供養(ついぜんくよう)」の対象として存在します。
このようなお位牌の風習は、もともとは仏教の教えではなく、中国で派生した儒教の風習が、奈良時代に日本へ伝わってきたものとされています。
当初は高僧や一部の貴族に限って用いられてきましたが、その後、江戸時代以降に庶民へと広まっていき、風習として根付いたものです。
お位牌の字をみると、その名残がみえてきます。
お位牌の「位」は「位=くらい(地位)」の意味ですから、もともとは庶民ではなく、地位の高い方々を対象にしていたのです。
お位牌の「牌」はそのまま「牌=お札」の意味です。
木や紙などの縦長の札に、文字を書いたものを指します。
とくにお位牌に限っては「戒名(かいみょう)」(かいみょう・浄土真宗においては法名)」を書いたものです。
浄土真宗でお位牌を用いないのは阿弥陀如来様により極楽浄土へ導かれるからです
基本的に浄土真宗ではお位牌を用いないとされています。それは浄土真宗の教義と相反するからと言われています。
お位牌はもともとは、位の高い人が亡くなった際の戒名を書き、供養したのが始まりです。
亡くなった方はご精魂としてお位牌にやどり、お位牌に書かれた戒名をもち仏様の弟子となります。
そして仏様のもとで修行し、その結果として仏様となり、極楽浄土へ向かうものとされています。
しかし、浄土真宗では浄土門の念仏を唱えること、すなわち「南無阿弥陀仏」と唱えることで極楽浄土へ導かれることが宗旨です。
阿弥陀如来様は、自ら人々をお救いなさるものとされます。
そのため亡くなった方の精魂は現世にはとどまらず、極楽浄土へそのまま導かれると考えられております。
したがって浄土真宗では、お位牌を用いてご精魂を留める必要がないとされているのです。
浄土真宗の方も最近お位牌を祀ることが増えています
お位牌は歴史的にみれば仏教派生のものではなく、儒教から派生した風習が根付いたものであることは解説のとおりです。
そしてそれが、江戸時代以降、民衆へ浸透していきました。
その名残で、浄土真宗のお宅でも、お仏壇にお位牌を祀っている方も多くいます。
宗旨としては確かに必要ないものとされているお位牌ですが、かといってそれがひとえに間違いというわけではありません。
お位牌は霊が宿る器としての意味とともに、故人を偲ぶための対象としての役割をもっているからです。
お位牌という、目にみえる供養の対象を用いたほうが、より故人を実感できるというのは、人として共感できるものです。
そのためお寺様のご意向によっては、お仏壇へお位牌を安置することをお認めになられていることもあります。
浄土真宗におすすめのお位牌
浄土真宗におすすめのお位牌
浄土真宗における法名軸や過去帳は故人を偲ぶための対象としての役割があります
他宗教におけるお位牌に対して、浄土真宗にも故人を偲ぶための対象として、そして記録としての「法名軸(ほうみょうじく)」や「過去帳(かこちょう)」があります。
過去帳と法名軸は、故人の法名や俗名(現世の名前)、没年月日などを記したものです。
法名軸は掛軸であり、お仏壇の左右の壁面に吊り下げます。
過去帳は見台(けんだい)の上にのせて祀ります。
法名軸は浄土真宗だけで使用するもので、過去帳よりも正式なものとされています。
法名軸と過去帳を一緒に飾り付けることもあり、どちらか片方のみとすることもあります。
なお法名は「故人に対して贈られる名前」と誤解されがちですが、適切な認識とはいえません。
本来は戒名は「仏弟子になることを誓って授かる名前のこと」です。
したがって浄土真宗では戒名ではなく法名というわけです。
過去帳には法名などを書き連ねていく形式のものと、日めくりカレンダーのように毎日めくっていく形式のものがあります。
こちらの場合、日々の供養で過去帳をめくっていき、何月何日にどなたが亡くられたのかが分かるようになっています。
過去帳は毎日見台に安置してお参りすることが基本となりますが、平時は経机の棚へしまっておき、法事などの正式な場に限って見台へ安置することもあります。
なお法名軸や過去帳を用意する場合、一般的にはお寺様にお願いします。
その際は四十九日法要までに用意していただきましょう。
すでにお手持ちのものがある場合は、法名を書き写していただきます。
最近ではお寺様にお願いせず、自分たちで記載することも増えております。
しかし、そもそも法名を授かることや、法名を授かっていることを原則としますので、やはりお寺様にお願いするほうがよいでしょう。
浄土真宗の宗旨を学んだ上で、それでもお位牌を祀りたい場合は菩提寺へご相談しましょう
真宗高田派
浄土真宗の分派である真宗高田派では、お位牌を祀ることが許されています。
真宗高田派では親鸞聖人の教えを遵守しつつも、追善供養を完全に否定していないとされるためです。
そのため「卒塔婆(そとば)」や墓石などに加えて、お位牌の扱いなども他の浄土真宗系の分派と比べても違いが見られます。
真宗高田派の方でお仏壇へお位牌を祀りたい場合、ご三尊の前を避けて、その左右やその下段へ安置します。
真宗高田派以外の浄土真宗の方でお位牌を祀りたい場合
真宗高田派をのぞき、ほとんどの浄土真宗ではその宗旨としてお位牌を祀りません。
されど世間一般的にお位牌を祀ることは増えています。
こうした事情を汲んで、お寺様によってはお檀家さんからご相談を受けた際に、ご許可をいただけることがあります。
その際はお仏壇自体へ安置することも、経机の上に枠を設けて安置することもあります。
浄土真宗の宗旨を学んだ上で、それでもお位牌を祀りたい場合、お寺様にその考えや思いをお伝えするとよいでしょう。
浄土真宗においてなぜお位牌を祀らないのかご理解いただけたでしょうか?
それは浄土真宗の教えとして、お位牌がなくとも、故人は極楽浄土へ導かれるからなのです。
故人を偲ぶために、お位牌を安置したいと考えられることは、しごくまっとうな心持ちですから、浄土真宗では代わりに法名軸や過去帳をもちいます。
お位牌であれ法名軸であれ過去帳であれ、このような故人を偲ぶ思いは、お仏壇をお参りする私たちにとって大切なことでしょう。
そのことを頭の片隅におき、お仏壇へお位牌を祀ったほうがよいのか、祀らなくてよいのか、決めてみてはいかがでしょうか?