仏具の選び方 【更新日】
仏具の置き方は宗派によって様々ですが、まずは基本の置き方から覚えましょう!
仏具には非常に多くの種類があり、全ての仏具の名前や役割、お仏壇での置き方を覚えるのは一苦労ですよね。
宗派や地域によっても、使用する仏具の種類や数は異なりますし、お仏壇の大きさやタイプ、供養方法によっても使用する仏具の数は変わってきます。
更に法事やお盆の際には、普段は使用しない仏具も用いてお仏壇を荘厳(しょうごん)するのです。
しかし、仏具には基本の置き方というものがあり、それを元に各宗派で必要とされる仏具を配置していけば、実はそれほど難しくはありません。
この記事では、お仏壇での一般的な仏具の置き方と、宗派別の基本の置き方を各宗派のご本尊や脇侍(わきじ)を含めてご紹介いたします。
仏具の基本の置き方を覚えましょう!
使用する仏具の数や置き方は宗派だけではなく、お仏壇の大きさやタイプによっても変わりますが、まずは基本の仏具の置き方を見てみましょう。
ここでは須弥壇が3段あるモダン仏壇(床置き型)で、スライド式の仏具板も使用した場合の仏具の置き方をご紹介します。
上段
お仏壇の最上段の中央にはご本尊を安置し、その左右には脇掛(わきがけ)か、仏像の脇侍(わきじ)を祀ります。
中段
お位牌はご本尊が隠れないよう、一段低い位置に安置します。
同じ段の中央には、左に茶湯器、右側に仏飯器を置きます。
可能なら仏器膳にのせて一段高くした状態でお供えしましょう。
下段
真ん中に1対の高坏(たかつき)を置き、その左側に花立、右側には見台にのせた過去帳を置きます。
仏具板
三具足の時は中央に前香炉、その右にローソク立て、香炉の左側には花立を置きます。
五具足を使用する場合には、中央に香炉、その両脇に1対のローソク立て、更に外側に1対の花立を置いて祀ります。
そして空いている左側に線香差しとマッチ消し、右側にはリンを配置します。
大型の仏壇の場合は最下段の仏具を経机(きょうづくえ)を利用して設置します。
膳引き(ぜんびき)には、お盆など特別な日に「霊供膳(れいぐぜん)」を供えることができます。
より荘厳するために天井に灯籠(とうろう)と瓔珞(ようらく)を設置することも可能です。
上置型のミニ仏壇などで段が少ない場合は、小さめの仏具を使用したり、仏具を手前と奥に分けて置いたりして工夫しましょう。
宗派別のご本尊の祀り方や仏具の置き方をご紹介します
浄土真宗以外の宗派での仏具の置き方は、上記のモダン仏壇や唐木仏壇での置き方と基本的には同じです。ただし祀るご本尊や脇侍などは変わるので、ここにご紹介します。
天台宗
日本仏教の根本を生み出した天台宗のご本尊は「釈迦如来(しゃかにょらい)」ですが、阿弥陀如来(あみだにょらい)や観音菩薩(かんのんぼさつ)の仏像が祀られることもあります。
ご本尊の左右には「不動明王(ふどうみょうおう)」と「弘法大師」をお祀りします。
真言宗
空海が開祖の密教です。
ご本尊には「大日如来(だいにちにょらい)」の仏像か掛け軸が安置され、脇侍には左に「伝教大師(でんぎょうだいし)」、右には「天台大師」をお祀りします。
曹洞宗
禅宗五家の1つである曹洞宗のご本尊は「釈迦如来」の仏像か掛け軸です。
左右には「常済大師(じょうさいだいし)」と「承陽大師(じょうようだいし)」が祀られます。
臨済宗
中国から伝わった禅宗ですが、臨済宗は日本で14に分かれた宗派の総称になります。
ご本尊は「釈迦如来像」と共通なのですが、左右の脇侍は宗派によって異なります。
例えば妙心寺派(みょうしんじは)では左に「花園法皇(はなぞのほうおう)」、右に「無相大師(むそうたいし)」を祀ります。
他にも左右の脇侍が「観音菩薩(かんのんぼさつ)」と「達磨大師(だるまたいし)」だったり、左が「普賢菩薩(ふげんぼさつ)」で右が「文殊菩薩(もんじゅぼさつ)」だったりと、宗派によって変わるので菩提寺への確認が必要です。
時宗
時宗のご本尊は阿弥陀如来で、「舟立弥陀如来(ふなたてみだにょらい)」像を安置します。
脇侍は左に「詫阿上人(たくあしょうにん)または真教上人」、右に「一遍上人(いっぺんしょうにん)」を祀ります。
浄土宗
「南無阿弥陀仏」の念仏で極楽浄土へ往生することが教えなので、ご本尊は阿弥陀如来です。
仏像の場合、舟型の後光が付いた立像が多いですが、座像でも良いとされます。
左右の脇侍は「法然上人(ほうねんしょうにん)」と「善導大師(ぜんどうたいし)」の仏像または掛け軸になります。
浄土宗では更に荘厳したい場合には、ご本尊にとって意義深い仏「脇仏(わきぶつ)」をご本尊と脇侍の間に祀ります。
脇仏は左に「勢至菩薩(せいしぼさつ)」、右に「観音菩薩」を安置します。
日蓮宗
「法華経(ほっけきょう)」を重んじる日蓮宗のご本尊は「大曼荼羅(だいまんだら)」の掛け軸です。
その前に「日蓮聖人(にちれんしょうにん)」の木像や「三宝尊(さんぽうそん)」を安置する場合もあります。
左右には「大黒天」と「鬼子母神」が祀られます。
浄土真宗系では使う仏具の種類や置き方は他の宗派と異なります
浄土真宗のお仏壇や仏具の特徴
浄土真宗系での仏具の置き方も基本は同じなのですが、使用する仏具の種類や数、お仏壇の祀り方には他の宗派と異なる点が多いので、大事なポイントを確認しておきましょう。
・ご本尊は基本「掛軸」で、本山から迎え入れるのが望ましい
・お位牌は使わず、法名軸(ほうみょうじく)や過去帳を使う
・金仏壇(特に大谷派)を使用することが多い
・仏具の色や素材は、黒や金(磨き)のものが使われる(大谷派専用の仏具もある)
・茶湯器は使用しない
・華瓶(けびょう)には華ではなく、水を入れ樒(しきみ)を挿す
・香炉は、土香炉(どこうろ)を使う。西本願寺派では「玉香炉」、大谷派では「透かし香炉」を主に使用する
・線香は数回折って香炉に寝かせて手向ける
・主に飾り用に、火舎香炉(かしゃこうろ)も使う
・餅・菓子・果物は、供笥(くげ)にのせて供える(本願寺派:六角形、大谷派:八角形)
・「机」のことを「卓」と呼ぶ
・荘厳装飾に、輪灯(りんとう)を使う
・三具足(五具足)以外に「四具足」を飾る
更には「西本願寺派」か「真宗大谷派」かでの違いもあるので注意が必要です。
西本願寺派の特徴
まず本願寺派ではご本尊の「阿弥陀如来」の掛け軸の両脇に「蓮如(れんにょ)聖人」と「親鸞(しんらん)聖人」を祀ります。
西本願寺派の四具足は、火舎香炉・華瓶1対・燭台です。
ご本尊の前に置かれた上卓の奥側の中央には燭台を、その左右には華瓶を置きます。
上卓手前側の中央には火舎香炉、その左右には1対の仏飯器を設置するのが基本です。
真宗大谷派の特徴
大谷派ではご本尊の阿弥陀如来の左右に「九字名号(くじみょうごう)」と「十字名号」をお祀りします。
大谷派では、ご本尊の正面に四具足として「華瓶卓(けびょうたく)」を置きます。華瓶卓には、奥側に1対の仏器(ぶっき)、手前中央には火舎香炉、その左右に華瓶を配置するのが通常です。
仏具の置き方には多くのパターンが存在し、たったひとつの正解はありません。
菩提寺での決まりごとが厳しくないのなら、基本の仏具の置き方や宗派別の置き方の傾向を元に、ご自分の環境に合った配置を見つければ、きっと日々のご供養が快適なものになることでしょう。