仏具の選び方 【更新日】
日蓮正宗で使用する仏壇や仏具は他の宗派と異なります
仏壇を購入し自宅に設置する際に重要になるのは、仏具の種類と並べ方です。
宗派によって仏壇の飾り方は異なりますが、特に日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)は、他宗派と比べて教義が厳しいため、充分な注意が必要です。
間違った仏具を選んだり、仏具の使い方を間違えたりすると、お祀りしているご本尊に失礼にあたります。
日蓮正宗で使用する仏具の種類やその使い方を、しっかりと覚えておいた方がいいですね。
この記事では、日蓮正宗で用いる仏具の種類や、仏壇内での並べ方をご紹介します。
目次
日蓮正宗の仏具は日蓮正宗に対応した仏壇店で購入しましょう
日蓮正宗は、建長5年(1253年)に日蓮大聖人(にちれんだいしょうにん)が建立したことにはじまります。
日蓮大聖人の入滅後、6人の弟子のひとり、日興(にっこう)が師の教えを正しく伝えるため、分派したのが日蓮正宗です。
総本山は「多宝富士大日蓮華山大石寺(たほうふじだいにちれんげざんたいせきじ)」で、宗祖である日蓮大聖人を末法の本仏(ほんぶつ)と仰ぎます。
日蓮正宗では、他の宗派よりもご本尊の祀り方の決まりごとが多く、使用する仏具が異なる場合もあるので、仏壇店は日蓮正宗に対応したお店を選ぶようにしましょう。
日蓮正宗でお供えに使う基本仏具は三具足と仏飯器と茶湯器です
日蓮正宗は、他宗派にくらべ考え方が異なる部分が多く、それに伴い仏具の飾り方も変わってきます。
特にご本尊にお供えする仏具は飾り方を間違えると、大変失礼なので要注意です。
では、日蓮正宗のご本尊にお供えする仏具にはどのようなものがあり、どのように飾るのでしょうか。
三具足・五具足
日蓮正宗では、通常のお参りには三具足(角香炉、花瓶、ローソク立て)を使って「香り・花・灯り」のお供えをします。
法事・法要などの正式な場では、五具足(角香炉、花瓶×2、ローソク立て✕2)にしてお供えします。
仏飯器と茶湯器
仏飯器(ぶっぱんき)とは、ご本尊に炊きたてのご飯をお供えするための器です。
ご飯は、毎朝自分たちが食べる前にお供えするようにしましょう。
茶湯器(ちゃとうき)とは、毎朝汲み初めの水をご本尊にお供えする仏具です。
他の宗派ではお茶やお湯もお供えしますが、日蓮正宗でお供えするのは、水に限られます。
そのため茶湯器を「水入れ」と呼称する仏壇店もあるので注意しましょう。
仏飯器、茶湯器は、仏壇の雰囲気に併せてセット購入することをオススメします。
日蓮正宗で前机や経机を利用したときに使う仏具と注意点
多くの仏具を使用してご本尊を正式にお祀りしたい時には、前机や経机を利用すると仏壇スペースを上手く使えます。
ただこの時、日蓮正宗で使用する仏具やその使い方は、他の宗派と異なるものもあるので気をつけましょう。
前机に飾る仏具と注意点
仏壇の中段には前机を設置します。前机の上中央には焼香用の火舎香炉を飾り、その左右に1対のローソク立て、さらに外側には1対の花瓶を飾ります。
三具足だけを使用する時は、中央に火舎香炉、左に花瓶、右側にローソク立ての配置にします。
なお、花瓶を使ったお供えには他の宗派とは異なる決まりごとがあるので注意しましょう。
日蓮正宗において、花瓶にお供えできるのは「しきみ」という植物に限られます。
「しきみ」は、豊かな生命力を持つ常緑樹で、その香りは邪気を払うとされています。
ご先祖様の未来世の長寿を願い、自分自身の長寿の祈願も含めて仏壇にはしきみをお供えしましょう。
なお、造花のしきみをお供えすることは、自らの修行と御給仕の懈怠(けたい)を意味するので、避けるのが賢明です。
経机に飾る仏具と注意点
仏壇の前に設置した経机には経典や角香炉を設置します。
他の宗派では前香炉や土香炉を使用しますが、日蓮正宗で使用する香炉は長方形の形をした「角香炉」です。
なぜなら、香炉の中に火をつけた線香をそのまま寝かせて入れるからです。
日蓮正宗では、この「寝かせ線香」という方式で線香をお供えします。
線香に火がついていない状態を「自分の迷い悩み」と定義し、線香に火をつけることで心の迷いを火で滅して灰にするという考え方があるからです。
灰に立てて使用すると、燃えていくにつれて灰が周りへ散りますが、これは心の乱れを意味します。
また、最後まで線香が燃えたとしても、灰の中の線香は燃え残ります。
それは悩みや煩悩が残ることを意味します。
これらの心の乱れや煩悩は、成仏の妨げにつながってしまうため、日蓮正宗では線香を寝かせて香炉に入れるのです。
日蓮正宗で用いない仏具は「仏像」と「位牌」です
他宗派で使用している仏具の中には、日蓮正宗では使用しない仏具もあります。
その代表的なものは「本位牌」です。
葬儀の時には日蓮正宗でも「白木位牌」を使用するのですが、四十九日に納骨を行う際にその白木位牌はお寺に納めます。
では、日蓮正宗では仏壇でご先祖様に参拝できないのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
日蓮正宗では位牌の代わりに「過去帳」に戒名などを記載して、朝夕の参拝に使用します。
過去帳は、仏壇の最下段の中央に飾ります。
また、仏像を使用しないのも日蓮正宗の特徴です。
ご本尊として仏像を祀る宗派も多いですが、日蓮正宗では仏像を使用しません。
なぜなら、日蓮正宗が読経する「法華経(ほけきょう)」には、「仏様の肉体や遺骨を拝んではいけない」と記載されているのです。
また、「仏様の全身が法華経の中におられます。法華経を安置しましょう」とも記されているため、日蓮正宗では仏像を使用しないのです。
名前が似ているためよく混同される「日蓮宗」では、日蓮聖人の仏像をご本尊「大曼荼羅」の前に祀ることがありますが、日蓮正宗においての日蓮大聖人は末法の仏。
すなわち【全身が法華経の中にいる】とされるため、日蓮像を拝むこともしません。
日蓮正宗では仏具の並べ方も他の宗派と少し違います
日蓮正宗の仏壇は内部に「厨子(ずし)」が設置されており、そこにご本尊を安置します。
ご本尊の近くに位牌を安置する宗派もありますが、日蓮正宗において位牌は仏壇に安置しませんので注意しましょう。
ご本尊の前には仏飯器と茶湯器をお供えします。
上段のスペースが狭くお供えできない場合は、仏壇の中段中央に設置しても問題ありません。
前述したように仏壇の中段中央には前机を置き、その上には三具足か五具足を設置します。
法事など正式な場では、前机に四角形の「打敷き」を掛けてから仏具を設置します。
仏壇の下段中央には過去帳、それをはさんで1対の高坏を置き、その外側に「生花(しきみに限る)を入れた1対の花瓶」を飾ります。
仏壇の前に設置した経机の上には、中央に角香炉、その左側にマッチ消しや線香立て、香炉の右手には教本や数珠、おリンなどを配置します。
日蓮正宗では仏壇や教義が他宗派と大きく異なり、それに伴い仏具の種類や飾り方も特徴的です。
仏具を購入する際は、日蓮正宗の仏具を取り扱っている仏壇店を利用してください。
ご本尊へのお供えに使用する仏具には様々な種類のものがあります。
ご本尊をできるだけ良い環境でお祀りするために、仏壇に合ったものをじっくりと選びたいものです。
仏具の選び方だけではなく仏具の使い方も、ご本尊をどれだけ大切にお祀りしているかを表現しています。
ご本尊に失礼がないように、正しい仏具の選び方や使い方もしっかりと覚えておくようにしましょう。