仏具の選び方 【更新日】
浄土真宗でお参りの際に使用する仏具とその使い方や飾り方を解説
皆さんは浄土真宗で使用する仏具にはどのようなものが必要かご存知でしょうか。
また、どのような使い方をするのか、どのような飾り付けをするのか、お仏壇のどこに設置するのか把握できているでしょうか。
浄土真宗では「三具足(みつぐそく)」や「五具足(ごぐそく)」といった基本的な仏具のほか、「四具足(しぐそく)」といった他の宗派では用いないような仏具もあります。
また「荘厳具(しょうごんぐ)」などはお参りの際に毎回意識するものでもないため、ついつい忘却してしまうこともあるでしょう。
そこで今回はたくさんある仏具のなかでも、お参りの際に実際に用いる仏具とその使い方や飾り方を解説します。
目次
浄土真宗とは日本で最も信者数の多い仏教宗派です
浄土真宗は平成29年末現在、日本における最も信者数の多い仏教宗派です。
浄土真宗の宗旨は「南無阿弥陀仏と念仏を唱えることで、極楽浄土へ迎えられる」とする教えに代表されます。
浄土真宗のご本尊は「阿弥陀如来」様であり、この念仏は「阿弥陀如来様に帰依いたします」という意味です。
浄土真宗は鎌倉時代のご僧侶であった親鸞聖人の著した『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』をその門下の弟子たちがまとめ上げ、ご聖典・ご経典として崇敬し、発展してきました。
浄土真宗はいくつかの分派があり、それぞれお仏壇や飾り付ける仏具に違いがみられます。
たとえば本願寺派(西)の方は主に黒い仏具をもちい、大谷派(東)の方は主に金色の仏具を用います。ご自身の流派に合わせた仏具を選択する必要があります。
浄土真宗でも使用される基本の仏具は三具足と五具足です
「お参り」は、行くの謙譲語としての意味のほか、仏教における供養を行うという意味を含んでいます。
仏教徒において「供養」は大切です。
お仏壇を用いて日常生活の中で、仏様を供養します。法事やお盆などのより正式な場では「五供(ごくう)」を行うことも基本となります。
五供とは、「花・灯り・香り・浄水・飮食(おんじき)」の5つの供養のことです。
五供に必要な仏具としては、三具足や五具足に加えて「仏器・仏飯器(ぶっき・ぶっぱんき)」も必要です。
なお浄土真宗の場合、浄水供養の考えがなく「茶湯器(ちゃとうき)」は用いないとされています。
さらに浄土真宗では三具足や五具足に加えて「四具足」、他にも「荘厳具」や「梵音具(ぼんおんぐ)」に、「過去帳」や「法名軸(ほうみょうじく)」も必要です。
三具足と五具足
日常的なお仏壇のお参りに必要な仏具を三具足と呼び、「花瓶(かひん・花立)、土香炉、燭台(ローソク立て・火立)」を指します。
三具足は主に「前卓(ぜんたく)」へ設置します。
この時、左側に「花瓶」、中央に「土香炉」、右側に「燭台」を設置します。
法事やお盆などのより正式な場では「五具足」を用いて「五供」を行います。
五具足は三具足に花瓶と燭台を1つずつ足したものです。
花瓶
浄土真宗では、日常的なお参りには花瓶に常花を活けることもありますが、正式な場では生花を活けます。
三具足では1つ、五具足では2つで1対の花瓶を用います。
土香炉
浄土真宗では香り供養の仏具に土香炉を使いますが、本願寺派では「玉香炉」、真宗大谷派では「透かし香炉」を用います。
他の宗派と違い、土香炉にはお線香を数回折って寝かし入れます。
これを焚いて香り供養を行うことを「燃香(ねんこう)」と言います。
燃香はお線香の香りを部屋に満たすものなので、延々と燃焼させたり煌々と灯す必要はありません。
燭台
燭台は灯り供養をおこなう仏具です。三具足では1脚、五具足では2脚で1対の燭台を用います。
本願寺派の燭台は特に決まりはありませんが、大谷派では鶴亀燭台を使います。
鶴亀燭台とは、亀の甲羅の上に鶴が片足で立っている姿をした燭台です。
三具足として大谷派で燭台を設置する場合、開いたくちばしを左に向けて、右側に設置します。
五具足の場合は加えて左側にも、こちらはくちばしを閉じた燭台を右に向けて設置します。
浄土真宗で用いる仏具には「四具足」もあります
四具足
本願寺派の四具足は「火舎香炉(かしゃごうろ)、華鋲(けびょう・華瓶)1対、燭台」の4つです。
対して大谷派の四具足は「火舎香炉、華鋲1対、仏器」の4つです。
それぞれ「宮殿(ぐうでん)」の手前に置いた上卓(じょうたく)の上に設置されます。
火舎香炉
火舎香炉は本来は香り供養をおこなう仏具ですが、現在はほとんど使用されることがなくなりました。
しかし火舎香炉は「荘厳仏具」としての重要な役割があるため、現在でも引き続きお仏壇に設置されています。
火舎香炉を向ける面は模様のある面か、3本ある脚のうち、1脚が手前側に、残り2脚が後ろ側になるよう設置します。
華瓶
華瓶は香り供養を行う2つで1対の仏具です。
花供養をおこなうものではありません。
そのため活けるのも「樒(しきみ)」と呼ばれる香木で、「香水(こうずい)」としてお供えします。
華瓶は上卓の火舎香炉を挟んで左右に置きます。
燭台
本願寺派では、四具足としても燭台を用いて灯り供養を行います。
お供えする位置は土香炉の裏側です。
仏器
仏器は大谷派の四具足の一つで、飮食供養をおこなう仏具です。
朝食前に、炊きたてのご飯をお供えします。
この時「盛糟(もっそう)」と呼ばれる仏具を使ってご飯を円筒形に盛り付けます。
お供えする位置は、土香炉の裏側です。
なお「脇侍(きょうじ)」が「名号」ではなく、親鸞聖人や蓮如上人の場合、それぞれの御前に仏器をもちいてご飯をお供えします。
浄土真宗で荘厳や梵音具として用いる仏具
荘厳具
お仏壇は御三尊を安置し、仏具を荘厳し、根性入れの儀式(荘厳)を行って頂いてはじめて供養の場所として機能します。
お仏壇を華やかにする「荘厳具」は、大変重要な仏具と言えます。
打敷
「打敷(うちしき)」は荘厳具の一つです。
浄土真宗では、上卓の前に三角形の面がくるよう敷き掛けます。
輪灯
「輪灯(りんとう)」は、お仏壇の天井から左右対にして飾り付ける照明具で、灯り供養とともにお仏壇を荘厳する仏具です。
本願寺派では「菊輪灯(きくりんとう)」を用いますが、大谷派は比較的簡素なものを用います。
供笥
「供笥(くげ)」は、「御仏供・御仏飯・御華束(おぶく・おぶっぱん・おけそく)」をお供えする仏器です。主に小餅などをお供えします。
本願寺派の供笥は六角形、大谷派の供笥は八角形となります。
お供えする場所は須弥壇の左右に、面の部分を正面に向けておこないます。
梵音具
また浄土真宗では「梵音具」として、おリンを「経机(きょうづくえ)」に設置します。
おリンは音を鳴らして供養をするものではなく、お経の開始や終了などに区切りをつけるためとされます。
ただし、おリンを使うかどうかは、ご自身の宗派によるため、ご住職様に確認したほうがよいでしょう。
過去帳や法名軸やお位牌
浄土真宗では、基本お位牌は祀りませんが、地域やお寺様のご意向などによって差異があります。
代わりに「過去帳」や「法名軸(ほうみょうじく)」が用いられます。
法名軸はお仏壇の両側の壁にかけて設置し、過去帳は見台に安置します。
それぞれご先祖の命日やお名前などが記されます。
過去帳より法名軸の方が正式なものとされていますが、最近ではどちらか片方だけを飾っても良いとされています。
浄土真宗の方が略式的にお参りする際に必要な仏具
三具足や五具足に加えて、四具足で仏具を飾り、それらをもちいてお参りをすることが浄土真宗の習わしですが、このような正式なお参りが難しいこともあるでしょう。
お仏壇の大きさに制約があったり日々の生活が忙しい場合は、略式的な形式でお参りすることも可能です。
略式的な飾り方であるからといって、浄土真宗の宗旨に反することはありませんし、御信心に差がある訳でもありません。
実際にお仏壇へ仏具を並べる場合ですが、御三尊の御前に「仏器膳(ぶっきぜん)」を敷きます。
その上に仏器を置き、両脇に1対の「高杯(たかつき)」を設置します。
最下段には、右から「見台に載せた過去帳、おリン、燭台、土香炉、マッチ消し、線香差し、花瓶」の順で並べます。
浄土真宗のお仏壇には、各分派ごとに様々な仏具が使われます。
浄土真宗の仏具の基本としては「三具足か五具足に、四具足を加えたもの」となります。
これらは普段の供養で使うため、慣れてしまえば戸惑うことはないでしょう。
一方、荘厳具の飾り方などはついつい忘れてしまいがちです。
だからといって、仏具の飾り方などに関して神経質になられる必要はございません。
浄土真宗の宗旨を学び、御信心の心をもってお参りを続けることこそ、最も大切なことだからです。
もしも浄土真宗の仏具に関して分からない点がありましたら本記事を思いだして頂いたり、私共お仏壇の専門店・専門家にお声がけして頂けたら幸いです。