仏壇の選び方 【更新日】
仏壇や仏具の種類の選び方・祀り方は浄土真宗と他の宗派で大きく変わります
現代では、ほとんどの人が無宗教だと言われます。
しかし、2016年に文化庁が行った「宗教統計調査」によると、日本における仏教系の信者数は86,900,000人(2013年データ)という結果が出ています。
これには、宗教団体への帰属意識が低い人や複数の宗教団体へ重複所属しているケースも含まれているので、実際、何パーセントの日本人が仏教徒なのか数字からは分かりませんが、相当数の仏教徒がいるのは明白でしょう。
今なお残る伝統仏教は13宗派ですが、同じ宗派の中でいくつかの宗派(分派)に分かれ、全部で56派あるとされています。
仏壇、位牌、仏具など仏壇まわりのことは全て、各宗派が定めた決まり事や、菩提寺の考え、その地域の慣習などによって様々です。
この記事では、現在の日本の代表的な宗派を紹介しますので、新たにお仏壇、ご本尊、お位牌、仏具などを購入し、お祀りする際の参考にしてください。
目次
【宗派1】真言宗の仏壇や仏具の選び方
真言宗(しんごんしゅう)は、平安時代に空海(弘法大師)が開いた宗派で、本山は「高野山金剛峯寺」にあります。
「この身のままで悟りを開き仏になる」という「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」を説く宗派です。
真言宗での修行は「身口意の三密修行」で、身体、言葉、心の修行を行うことで、誰でも仏になることができるというものです。
【宗派2】天台宗の仏壇や仏具の選び方
天台宗(てんだいしゅう)は、今から1200年前の延暦25年(806)に伝教大師「最澄(さいちょう)」によって開かれた宗派です。
日本仏教の根本を作り出したことから「日本文化の母」と言われています。
天台宗の修行の特徴は「止観」にあります。心を静めて本来の静寂な状態に安定させることが「止」で、「止」によって安定した心で対象を観察することが「観」です。
「止観」は、「止」という禅定だけでなく、「観」という智慧も重視するところを特徴とする瞑想法です。
「天台本覚思想(てんだいほんがくしそう)」では、「一切の衆生には本来、仏性(悟りの智慧)を備えている」とされます。
この思想では、人間のみならず草木や国土にも仏性があるとします。
【宗派3】曹洞宗の仏壇や仏具の選び方
曹洞宗(そうとうしゅう)は、中国の禅宗五家(臨済、潙仰、曹洞、雲門、法眼)の1つで、鎌倉時代に道元(どうげん)が日本に伝えた仏教宗派です。
坐禅を修行の中心に据え、「只管打坐(しかんたざ)」という一切の雑念を捨て去って、ただひたすらに坐禅を行うことを最も重視します。
「即心是仏(そくしんぜぶつ)」という【己の心すなわち仏である】という、坐禅の状態で日常生活を生きていくことを説きます。
「禅戒一如(ぜんかいいちにょ)」とも言い、坐禅で学んだことが生活に現れると考えます。
曹洞宗の黙照禅(もくしょうぜん)では、黙々と座ることによって、人が持つ仏の心性が現れて、仏徳がそなわっていくとされます。
【宗派4】臨済宗の仏壇や仏具の選び方
臨済宗(りんざいしゅう)も、同じく中国の禅宗五家の1つで、鎌倉時代に栄西(えいさい)によって日本に伝えられました。
日本仏教においては曹洞宗と同じく禅宗(臨済宗・曹洞宗・日本達磨宗・黄檗宗・普化宗)の1つとされます。
14に分かれる宗派の7つの本山は京都府に集まっています。
臨済宗では、座禅によって、身、息、心の調和を取ることで悟りが得られるとされます。
看話禅(かんなぜん)は対話型の禅で、師から示された公案について考え悟りを目指す(禅問答)というものです。
【宗派5】浄土宗の仏壇や仏具の選び方
浄土宗(じょうどしゅう)は、法然上人(ほうねんしょうにん)が開いた仏教宗派です。
「阿弥陀如来(あみだにょらい)」の救いを信じて西方極楽浄土へ往生する教えを広めました。
「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)と唱えることで、必ず仏の救済をうけて浄土に生まれることができる」という「他力本願の教え」が特徴です。
もともと貴族のための宗教だった仏教を、民衆のために大衆化したのは浄土宗だと言われています。
【宗派6】浄土真宗本願寺派の仏壇や仏具の選び方
浄土真宗本願寺派(じょうどしんしゅうほんがんじは)は、最も信者数が多い日本最大の仏教宗派です。
本山は「龍谷山本願寺(りゅうこくざんほんがんじ)」ですが、一般的には「西本願寺」の通称で呼ばれます。
境内などは国宝はもとより、世界遺産にも登録されています。
浄土真宗本願寺派の宗祖は「親鸞聖人(しんらんせいじん)」であり「観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)、無量寿経(むりょうじゅきょう)、阿弥陀経(あみだきょう)」を経典とします。
「浄土門の念仏(南無阿弥陀仏)を唱えることで、死後に浄土へ導かれる」とする他力の教えを宗旨とします。
浄土真宗では、亡くなった方の精魂は現世にはとどまらず、極楽浄土へそのまま導かれると考えられているので、位牌は用いません。
【宗派7】真宗大谷派の仏壇や仏具の選び方
浄土真宗大谷派(じょうどしんしゅうおおたには)は、778万人の信者数をようする日本第二位の仏教宗派です。
本山は「真宗本廟(しんしゅうほんびょう)」ですが、通称の「東本願寺」で知られています。
真宗大谷派も宗祖を「親鸞聖人」とし、経典は「浄土三部経(じょうどさんぶきょう)」を用います。
代表的な宗旨は他力念仏であり、「南無阿弥陀仏」と唱えることで、等しく浄土へ導かれるとするものです。
西本願寺派と大谷派では、同じ浄土真宗といえど、安置するご本尊、金仏壇のつくり、使用する仏具の選び方や祀り方などがかなり異なります。
【宗派8】日蓮宗の仏壇や仏具の選び方
日蓮宗(にちれんしゅう)は、建長5年(1253年)に日蓮大聖人(にちれんだいしょうにん)が建立したことにはじまる宗派のひとつです。
法華経への信仰来世ではなく、現世を生きることの重要性を説き、仏の教えは「南無妙法蓮華経」の集約されると考えられています。
仏壇や仏具の種類に規定はありませんが、読経時には団扇太鼓や木鉦など独自の仏具を使うこともあります。
【宗派9】日蓮正宗の仏壇や仏具の選び方
日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)は、日蓮大聖人の弟子である日興(にっこう)により開創されて以来750年の歴史を持っています。
全部で700を超える寺院があり、アメリカや台湾を中心として海外にも教義を広めています。
総本山は「多宝富士大日蓮華山大石寺(たほうふじだいにちれんげざんたいせきじ)」で、宗祖である日蓮大聖人を末法の本仏(ほんぶつ)と仰ぐのが特徴です。
日蓮正宗では、他の宗派とは異なり「厨子(ずし)」がついた専用の仏壇が必要になるので注意が必要です。仏壇にはご本尊だけを安置し、位牌は祀りません。
【宗派10】創価学会の仏壇や仏具の選び方
創価学会(そうかがっかい)は、1930年に創立された在家仏教の団体で、現在、日本はもとより、海外192の国・地域に会員を得て、「万人の幸福」と「世界の平和」の実現を目標に活動しています。
日蓮宗の開祖である日蓮聖人の教えを継承していて、「法華経」の教えを世界に広めることを大切な役割りとしています。
「法華経」を音読して「南無妙法蓮華経」の題目を唱える朝夕2回の「勤行」は、創価学会の会員の重要な日課とされます。創価学会では仏壇に位牌は置きません。
なぜなら会員にとって、仏壇とは信仰の根本対象である「本尊」が安置された、日々の信仰対象だからです。
【宗派11】無宗教の場合の仏壇や仏具の選び方
現代では生活スタイルや価値観が多様化した現代では、無宗教の方が増えています。
無宗教の方が、実家から受け継いだ仏壇を新調したり、家族が亡くなって仏壇やお位牌が必要になった時には、モダン仏壇やモダン位牌、モダン仏具などを選ぶのが一般的です。
ミニ仏壇にお位牌と仏具だけを置いて祀る「手元供養」を始める方も増えています。
生活の中で故人を偲ぶという宗教や慣習にとらわれない自由な形は、現代社会に必要な葬送方法なのかもしれません。
古い歴史をもつ日本仏教。
昔の日本人は、どこかのお寺の檀家となっていました。
家系図をたどっていけば、きっと誰でもある宗派にたどり着くはずです。
無宗教の方も、祖父や親の代から受け継がれた大切なお仏壇やご先祖様のお位牌に、ホコリが積もってしまうことがないように、一度ご自身のルーツを見直してみるのはいかがでしょう。