仏壇の選び方 【更新日】
真言宗での仏壇の選び方からご三尊の祀り方、仏具の飾り方まですべて解説します
仏壇は日々のお参りから法事まで、仏教徒の生活からは切り離せない存在といえます。
そのため、仏壇を見るだけでも、その宗派のことを垣間見ることができます。
仏教の宗派は、日本だけでみても有に百を超えるほど多く存在しています。
その分、仏壇の扱いは宗派ごとに特徴が見られ、それぞれ独自の決まりごとが存在します。
そこで今回は、真言宗での仏壇の選び方やご本尊の祀り方、仏具の飾り付け方まで丁寧に解説します。
真言宗の基本的な作法が知りたい方は、本記事をお読みいただけることで、一通りの知識を習熟できるでしょう。
真言宗は密教としてしられる平安時代の仏教宗派です
真言宗は平安時代の僧である「弘法大師空海(こうぼうたいしくうかい)」によって開かれた仏教宗派です。
唐の僧侶である「恵果(けいか)」に師事して学んだ「真言密教(しんごんみっきょう)」をもとに開かれました。
密教とはその宗派独自の教えを師から弟子へ口頭で伝える仏教宗派です。
「大日如来(だいにちにょらい)」様を絶対とし「身、口、意」の三密行を実践すれば「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」できると説かれています。
基本経典としては『大日経(だいにちきょう)』や『金剛頂経(こんごうちょうぎょう)』に『般若心経(はんにゃしんぎょう)』などがあります。
真言宗には分派が多く、それぞれに総本山があります。
京都市にある「東寺(とうじ)」を総ご本尊とする分派や、和歌山県にある「高野山金剛峯寺(こうやさんこんごうぶじ)」を総本山とする分派もあります。
東寺は嵯峨天皇より贈られて根本道場とされたものであり、金剛峯寺は空海が「入定(にゅうじょう)」なされた場所とされます。
入定とは、真言宗の密教による修行の一つとされ、生きたまま仏様になられることです。
真言宗の仏壇へ安置するご本尊は大日如来が基本です
真言宗ではご本尊として大日如来をお祀りします。
ご本尊は仏像が基本ですが、掛軸でも構わないとされています。
大日如来は姿や形がなく、永遠に存在し続ける仏様であるとされ、すべての仏様は大日如来が形を変えたものとされています。
そのためご自身が信仰している仏神様がいらっしゃる場合、そちらを祀られても構わないものとされます。
大日如来以外にも、「薬師如来(やくしにょらい)」、「阿弥陀如来(あみだにょらい)」、「観音菩薩(かんのんぼさつ)」、「文殊菩薩(もんじゅぼさつ)」、「不動明王(ふどうみょうおう)」などがよく祀られます。
左右でご本尊の補佐を務める脇侍(きょうじ)には、「弘法大師」を右側に、「不動明王」を左側にお祀りします。
ご本尊や脇侍についても、どの仏神様を祀るかは、分派や菩提寺様によって違いがみられます。
仏壇を購入する際に、菩提寺様へ確認しておくとよいでしょう。
真言宗の仏壇は唐木仏壇かモダン仏壇を選びましょう
真言宗の仏壇は、金仏壇を避ける以外にこれといった決まりはありません。
通常は「唐木仏壇」か「モダン仏壇」から選びます。
モダン仏壇
最近人気のある仏壇で「家具調仏壇」とも呼ばれます。
フローリングの住宅にも合わせやすいようコンパクトでデザイン性の高い仏壇です。
より小型で、家具の上のスペースへも設置できる「ミニモダン仏壇」も人気です。
唐木仏壇
真言宗で昔から使用される仏壇としては唐木仏壇があります。
材質として高級木材をもちいた仏壇ですが、最近では合成樹脂やプラスチックなども用いられています。
仏壇の置き方と向き
仏壇は高温多湿な場所を避けて設置します。
和室だけにとどまらず、洋室へ設置することもできます。
真言宗の仏壇を設置する向きについても、特に決まりはありません。
ただし、菩提寺様によってはその宗派の本山へ向けて設置するよう指示されることもあります。
菩提寺様への連絡
仏壇を購入する際は、菩提寺様へご連絡し、ご相談されることをおすすめします。
その際は「仏壇を設置したい理由、家の中の設置場所、仏壇を購入後に必要になる手続き」といった点を整理してお伺いするといいでしょう。
仏壇はご信仰の中心となる大切なものです。
ご住職様へ相談し、よりよい仏壇選びを心がけましょう。
真言宗の仏壇へ飾り付ける仏具と置き方
真言宗の仏壇を購入されましたら、仏壇へ仏具を飾り付けていきます。
真言宗の一般的な飾り方を解説しますが、分派によって差異がみられます。
必要に応じて菩提寺様へ確認されるとよいでしょう。
ここでは供養スペースが3段あるタイプの仏壇の膳引きも利用して飾る方法を解説します。
段が足りない場合は、段を前後に使い分けたり、仏壇の前に経机などを設置して対応します。
天井
瓔珞(ようらく)は2つで1対としてつかう吊り灯篭です。
仏壇の天井へ留め具を付けて「隅瓔珞」を吊り下げ荘厳します。
モダン仏壇などの場合、こちらは省略しても構いません。
最上段
ご本尊様と脇侍を安置します。
脇侍はご本尊と少し低くなるように飾ります。
ご本尊の前には「仏飯器(ぶっぱんき)」と「茶湯器(ちゃとうき)」を供えます。
この時仏飯器を右、茶湯器を左にして置きますが、「仏器膳(ぶっきぜん)」の上に設置して供えるのが正式です。
スペースがある場合は左右の「脇掛(わきがけ)」・脇侍の前にも仏飯器を置きます。
茶湯器には新鮮な水かお茶、仏飯器へは炊きたての御飯を入れてお供えします。
中段
お位牌は二段目の右側から順に安置していきます。
このとき、ご本尊の前にお位牌が被らないよう注意してください。
「高杯(たかつき)」を1対として段の中央に配置します。
高杯は果物やお菓子など、仏様へお供えする仏具です。
宗派によっては見台にのせた「過去帳(かこちょう)」を1対の高坏の間に飾ります。
最下段
仏壇の下段には「五具足(ごぐそく)」を飾り付けます。五具足とは「花立(はなたて)」が1対、「前香炉(まえこうろ)」が1つ、「ローソク立て(燭台・火立)」が1対の、計5つの仏具を指します。
中央に前香炉、それをはさんで1対のローソク立て、左右の両端には花立を飾ります。
宗派によっては、右端に見台にのせた過去帳を安置します。
法事など特別な日には、下段に「打敷(うちしき)」を敷き掛けます。
真言宗では、四角形で桐紋や巴紋の入った打敷をもちいます。
膳引き
ここには「霊具膳(りょうぐぜん)」を供えます。
霊具膳は法事などの特別な日に供えるもので、基本的に精進料理をお供えします。
霊供膳は2膳ないし1膳をお供えします。
日常であっても、お歳暮やお土産などを頂いた際も、こちらへお供えします。
経机
経机の右側には「おリン」を置きます。
中央には教本を置き、その左側には数珠を置きましょう。
また真言宗では読経の際に木魚をもちいます。
木魚はなくとも構いませんが、使用される場合は、木魚布団に乗せて経机の右隣におきましょう。
木魚やおリンは、それぞれがすっぽり収まるサイズの木魚布団やリン布団を敷くと、音が綺麗に鳴ります。
真言宗では仏壇を選ぶ際には特段の決まり事はないので、菩提寺様とご家族とで話し合って決めていきましょう。
仏壇は高価なものです。
できるだけ失敗のない仏壇選びをしたいと誰しも考えることでしょう。
その際、考えていただきたいことがあります。
私たちは一生涯をかけて仏壇と向き合っていくことです。
場合によっては、何世代もかけて仏壇と向き合っていくのです。
日々のお参りを無理なくおこなえるかどうかをも、仏壇選びの際に意識していただくとよいでしょう。