仏壇の選び方 【更新日】
神道における仏壇とは神棚?それとも祖霊舎(それいしゃ)
日本の代表的な宗教としては、仏教に次いで神道があげられます。
自分は神道だとハッキリ言い切る方は多くないと思いますが、日本人にとって神道はとても身近な存在です。
ほとんどの方は七五三の時に神社にお参りをしたり、受験の前にお守りや絵馬を購入したり、お正月に神社に初詣に行っておみくじを引いたりした事があるのではないでしょうか。
それなのに、神道で祀る神棚は仏教のお仏壇よりも目にする機会が少ないと思います。
神棚のないご家庭で育った方は、神道での神棚の祀り方や使う神具についてあまり知らないのではないでしょうか。
この記事では、神道で神棚に祀る「祖霊舎」の役割とお仏壇との違い、お祀りに使う神具についてご紹介します。
神道での神棚は仏教での仏壇に当たります
神道とは?
神道は日本独自の民俗宗教だと言われますが、これは古代日本に生まれた素朴な自然信仰が元になっています。
日本人は大昔から山や火などの自然や土着の「八百万の神々」を信仰していました。
神社のなかった時代には山や木や岩などを神の依代(よりしろ)として祀っていました。
祭りの時に依代の側に立てる仮小屋を「社(やしろ)」と呼んでいましたが、それが現在の神社の原型となったそうです。
神棚と仏壇で祀るものは?
神棚とは神様を祀る場所で、神棚には神社の本殿を模して白木で造られた「宮形(みやがた)」を安置します。
お仏壇にはご本尊を祀りますが、神道の宮形には神社から授かった「お神札(おふだ)」を祀ります。
一般的には宮形は「神棚」と呼ばれますが、厳密に言うとお神札をお祀りする棚が神棚、お神札を納める神社を模した入れ物が「宮形」です。
宮形は一社造り、三社造り、七社造り、神明造りや箱宮など様々な種類のものがありますが、ご家庭の神棚には一社造りか三社造りの宮形を置くのが一般的です。
神棚には聖域を分かつためにしめ縄を取り付けますが、これは毎年お神札と共に取り替えます。
神道で神棚に祀る「お神札」と仏壇に祀るご本尊
神棚の設置場所
神棚は壁の上方に天井から吊るしたり、鴨居を利用して安置します。
神棚板は和室ならば長押(扉の上の横桟)の上、洋室、会社やお店の場合は、大体床から1m80cm以上の高さに設置するといいでしょう。
神棚が作れない場合はタンスなどの上に祀ることも可能です。
方角は南か東向きに置くのが良いとされますが、難しい場合は清潔でお参りしやすい場所であれば大丈夫です。
神棚(宮形)にお神札を祀る
神道の神棚(宮形)には伊勢神宮をはじめ、氏神様や縁のある神社で授かったお神札をお祀りします。
お仏壇には宗派によって異なるご本尊(仏像・掛け軸)を祀りますが、神道の神棚に祀る「お神札」も地域や信仰する神社によって変わります。
お神札は宮形の扉の内側の御簾(みす)をくぐらせるようにして納めます。
神棚(宮形)が一社造りの場合
一社造りでは伊勢神宮(天照皇大神宮)のお神札である「神宮大麻(じんぐうたいま)」を一番手前にし、その後ろに地元の氏神神社のお神札、そして自分が崇敬する神社のお神札の順に重ねて祀ります。
神社にお参りをされた際に受けたその他のお神札は、更に後ろに重ねて納めます。
宮形に入らない大きさのお神札や、数が増えて納まり切らないお神札は、宮形の脇に並べて祀ります。
神棚(宮形)が三社造りの場合
お仏壇には中央にご本尊、その左右に脇掛を祀りますが、三社造りの神棚にお神札を祀る場合の御神座(ごしんざ)の順位は、中央が最上位、次が向かって右、その次が向かって左となります。
中央に伊勢神宮の神宮大麻を祀り、向かって右に氏神様のお神札、そして左に自分が信仰している神社のお神札を祀ります。
ただし出雲大社の場合は中央に神宮大麻、向かって右に出雲大社の代表的なお神札の「御玉串(おたまぐし)」、左に氏神様のお神札を祀ります。
神道で祖霊舎に祀る御霊代と仏教で仏壇に祀る位牌
神道における祖霊舎(それいしゃ)と御霊代(みたましろ)
「祖霊舎」は神道を信仰する人が故人を祀るもので、「神徒壇(しんとだん)」とも呼ばれます。
お仏壇は「仏様を祀る場所」と「故人を祀る場所」という2つの顔を持ちますが、神道の場合は「神様を祀るのが宮形(神棚)」で、「故人を祀るのが祖霊舎」という様に分かれていると考えればいいでしょう。
「祖霊舎の中には、お仏壇でいうお位牌にあたる「霊璽(れいじ)」をお祀りします。
霊璽は故人の霊が宿る依代なので「御霊代」という名でも知られています。
神道ではご家庭で御霊代を祀ることで、故人やご先祖が家の守護神となって子孫を守ってくれると考えられています。
御霊代にはお位牌と同じく故人一人ひとりに作られるものと、回出位牌のように数人分をまとめたものがあります。
ただ御霊代は基本的に目に触れてはいけないものなので、お仏壇に置くお位牌とは異なりカバーのようなもので覆って祖霊舎の内扉の奥に祀ります。
ちなみに祖霊舎には、しめ縄や御簾を使ったり、お神札を納めたりはしません。
祖霊舎の祀り方
大きさによりますが、祖霊舎は直接床に安置するか適当な高さの台の上に祀ります。
その時神棚の様にできれば南か東を向くようにします。
お仏壇に祀るご本尊とお位牌の関係と同じく、祖霊舎と神棚の両方を祀る場合には祖霊舎を神棚より低い位置に安置します。
お参りする際には、祖霊舎の前に必ず神棚をお参りするようにしてください。
神道で使う神具と仏壇の仏具
お仏壇で仏具を使ってお参りするように、神道でも様々な神具を使って神棚や祖霊舎を祀ります。
神道の祭壇に奉献する飲食以外のものは「幣帛(へいはく)」と呼ばれます。
神鏡(しんきょう)
「神鏡は太陽神である天照大神の象徴で、神霊のご神体として神棚の扉の前に祀られます。
常は「雲形台」と呼ばれる雲の形をした台にのせて用います。
かがり火(燭台)
三本の棒を組み合わせて脚にし、その上に灯明皿がのせられた燭台です。
お仏壇で言う「灯明(とうみょう)」になり、1対を神鏡の左右に置いて使います。
春日灯篭(かすがどうろう)
かがり火の脇に置いて灯明をお供えします。
榊立て(さかきたて)
神棚の左右には1対の「榊立て」に榊(さかき)を入れて供えます。お仏壇での「花立」の役割を担います。
真榊(まさかき)
五色ののぼりの先端に榊を立て、三種の神器を掛けたものです。
向かって左に剣を掛けたもの、右に鏡と勾玉を掛けたものを立ててお供えします。
御幣(ごへい)
稲妻のような形をした白い2本の「紙垂(しで)」を「幣串(へいぐし)」と呼ばれる竹や木で挟んだものです。
もともと神霊の依代とされたものが、しめ縄などにつけて聖域を表すようになり、榊につけて「玉串(たまぐし)」として神前に捧げるようになりました。
玉串とはお仏壇における焼香の行いの時に使うものです。
日本古来の宗教である神道は、仏教よりも古い歴史をもつものです。
たとえ各自が意識していなくとも、地域の神社のお祭りに参加したり、お正月などに神社へ参拝したりというように、神道は日本人の民俗的な風習として生き続けているのです。
神棚や祖霊舎の役割や神具の祀り方を知って、今後はお仏壇の様に神道の神棚を身近に感じていただけることを願っています。