仏壇の選び方 【更新日】
仏壇でお線香をあげるのは香供養のためで宗派によって線香の本数は変わります
仏壇のお線香はご先祖様や故人の供養に欠かせないとても重要なものです。
仏教徒でなかったり仏壇のない家で育った人でも、誰かの家の仏前で祈りを捧げる機会はあることでしょう。
そんな時には仏壇にあるお線香を自然に手にとって火をつけようとするのではないでしょうか。
しかし「正しいお線香の供え方」というのがある事をご存知でしょうか?
実は宗派や菩提寺、地域によって仏壇に供えるお線香の本数や手向け方は違います。
誰かの家へ行って大切な故人の供養をする際に、間違った方法でお線香を供えるのは失礼にあたりますので、大人として基本的な仏事マナーはおさえておきましょう。
また、ご自宅に仏壇がある場合は、自分の宗派の香供養の作法を確認しておきましょう。
ここでは仏壇にお線香を供える意味、そして宗派によって変わるお線香の本数や仏前でお線香を手向ける際のマナーについてご紹介いたします。
目次
仏壇にお線香を供える風習はインド生まれ。香りで空間や人の穢(けが)れを清めます
お線香の香りを供養に使うようになったのは古代インドに由来します。
インドでは豊富にあるスパイスをブレンドして、お香を焚いたり体に塗ったりして悪臭を防いでいました。その風習は仏教に取り入れられ、仏前でも香を焚くようになりました。
好香を焚いて仏を奉請することから、後には仏を供養するものへと発展したようです。
「お香文化」は聖徳太子の時代に日本に伝来し、仏教においての大切な香り供養の役目を担うようになりました。
お線香はご先祖様や故人を「香供養」する役割を持っています。仏壇供養には他にも「灯供養」や「花供養」等がありますが、そのために使われる香炉、ローソク立て、花立の3つは「三具足」と呼ばれ、全ての宗派で大切な基本仏具とされています。
仏壇にお線香をお供えすることは仏様や故人の食事という役割だけではなく、香煙を通じて仏様と対話するという意味合いも持っています。
更にお線香の良い香りは、空間や供養している私達の心身の穢れを清め、仏壇と向き合う私達の心を落ち着けてくれるのです。
仏壇に供えるお線香の種類は「匂い線香」が最適です
お香とお線香の違い
お香とお線香の原料や作り方は基本的に全く同じですが、お香は香りを楽しむため、お線香は仏事に用いるものです。
供養に使うお線香は細い棒状か渦巻状のものが多いですが、お香の方は様々なタイプがあります。
お線香の原料
お線香は様々な原料を調合して作られますが、その多くは天然原料です。
漢方薬にも用いられる椨(たぶ)・沈香(じんこう)・白檀(びゃくだん)・桂皮(けいひ)・丁子(ちょうじ)・大茴香(だいういきょう)等はよく使われる原料です。
お線香の種類
お線香はその原料によって大きく2種類に分かれます。
匂い線香
ご家庭の仏壇で使用されているお線香の大部分がこのタイプで、椨(たぶ)の木の皮を基材に色々な香木や香料を調合して作られます。
炭を原料にした煙の少ない匂い線香もあります。
杉線香
乾燥させた杉の葉の粉末を原料とした杉特有の香りのお線香です。
煙を多く出し匂い線香より香りは劣りますが安価です。
お墓参りで使われる「護摩線香(ごませんこう)」が代表的です。
仏壇でお線香を供える香炉は「前香炉」と「土香炉」が一般的です
仏壇で使う香炉には様々なものがありますが、焼香用の香炉と仏壇供養に使う香炉に大きく分かれます。
更に宗派やお寺によって使用する香炉が変わることがあり、特に浄土真宗系で使用される香炉は他の宗派とはかなり異なるので注意が必要です。
焼香用の香炉
葬儀や法要時の焼香では、仏壇の前卓に脚付きタイプの焼香用香炉を置いて使います。
人数が多かったりスペースの都合で廻し焼香をする場合には「焼香用角香炉」を使うのが一般的です。
焼香用角香炉は右に細かくしたお香、左に灰と火種となる香炭(こうたん)を入れて使用します。
浄土真宗系の焼香では「火舎香炉(かしゃこうろ)」や「金香炉」と呼ばれる真鍮製の香炉を使います。
三脚の炉に煙出しの穴(煙孔)のある蓋「火屋(ほや)」がついているのが特徴です。
仏壇に置く香炉の種類
仏壇にお線香を供える時には「前香炉(まえこうろ)」と「土香炉(どこうろ)」を使うのが一般的です。
前香炉(まえこうろ)
最もよく見られる口が広がった香炉で、中にお線香を立てて使用します。
「線香炉」や「机用香炉」と呼ばれることもあり、浄土真宗以外の宗派で多く使われています。
土香炉(どこうろ)
主に浄土真宗系で使用される蓋のない陶器(青磁)の香炉で、お線香を寝かせて使います。
土香炉には丸みがある形の「玉香炉(たまこうろ)と透かし模様の入った「透かし香炉」がありますが、「玉香炉」は本願寺派で、「透かし香炉」は主に大谷派で使用されます。
長香炉(ながこうろ)
長い線香を折らずにそのまま縦に寝かせて供えるタイプの香炉で、伝統的な黒檀調や紫檀調のものが多いです。
浄土真宗系の多い北陸地方などで使われているようです。
仏壇でお線香を供えるための香炉は仏壇の中央に置きます
香炉は通常仏壇の経机の上に置きますが、経机がない小型の仏壇の場合は、仏壇の最下段かスライドさせた膳引きの上に置きます。
香炉の向きは彫りや絵柄などが入っている場合は、そちらを前側にして置きます。
三脚の香炉は一本足を手前(自分側)、二本足を後ろ(仏壇奥側)にして置きます。
浄土真宗以外の宗派での香炉の置き方
浄土真宗以外の宗派では、三具足の時は中央に前香炉、向かって右にローソク立て、左側に花立を置きます。
五具足を使う場合は中央に香炉、その両脇に1対のローソク立て、更に外側に1対の花立を祀ります。
浄土真宗系での香炉の置き方
浄土真宗系でも三具足の時には前卓の中央に土香炉、右に燭台、左に花瓶(かひん)、五具足の時には中央に土香炉、両脇に1対の燭台、その外側に1対の花瓶を配置します。
本願寺派では前卓の土香炉の奥にもうひとつ焼香用の「金香炉」を置きますが、法要時などではまた配置が変わります。金香炉の向きは、八藤紋と蓋の獅子(もしくは龍)が正面にくるように置きます。
更に本願寺派や大谷派では、本尊に近い上卓(うわじょく)中央に「火舎香炉(かしゃこうろ)」その後ろに燭台、左右の端に香木を挿した1対の華瓶(けびょう)を置いて「四具足」で祀るのが正式とされています。
仏壇に供えるお線香の本数や手向け方は宗派によって変わります
仏壇にお供え方するお線香の本数やその手向け方は宗派によって変わります。
同じ宗派でもお寺や地域によってお線香の手向け方が異なる事があるので確認が必要です。
お線香を1本供える宗派(曹洞宗・臨済宗・日蓮宗)
お線香を香炉の真ん中に1本立てて供えます。
お線香を1本立てる理由は「一心に祈る」という意味や「仏の真の教えは一つだけである」という意味が込められていると言われます。
昔はお線香が燃え尽きるまでの時間を計って修行や瞑想をしていたそうです。
お線香を2本か1本を2つに折って供える宗派(浄土宗)
浄土宗では1本のお線香を2つに折るか、2本のお線香を使います。
2本同時に火をつけて香炉の真ん中に立てます。
お線香1本を2~3回折って供える宗派(浄土真宗本願寺派・大谷派)
浄土真宗では1本のお線香を土香炉の大きさに合わせて2~3回折って置きます。
長香炉を使う場合は1本のお線香を寝かせて焚きます。
横に寝かせて置くのは線香のなかった時代に、灰の中に作った溝にお香を燃して香り供養をしていた名残と言われます。
お線香を3本供える宗派(天台宗・真言宗)
天台宗や真言宗では3本のお線香を同時に香炉に立てます。
3本あげる理由は仏教の基本的な考え方「三帰依」から来ていて、「三宝(仏・法・僧)」を大切にしているからです。
他にも「三世(現在・過去・未来)」の全てのものを供養するため、煩悩である「三毒(貪・瞋・癡)」を滅するため、「三業(身・口・意)」を清めるため等の説があります。
ただし、天台宗や真言宗であっても四十九日までは故人の枕元に立てるお線香は1本のみなので気をつけましょう。
仏壇でお線香をあげる手順や作法は宗派によって変わるので確認しておきましょう
お線香の供える手順は各宗派で使用するお線香の本数によって異なるので、お供えする仏壇の宗派のやり方に従いましょう。
一般的な流れとしては、
1.仏壇に向かって軽く一礼する
2.ローソクに火がついていない場合には火をつける
3.線香立てからお線香を取り出す
4.火立てのローソクからお線香に火をうつす
5.お線香を持っていない方の手で扇いで火を消す
6.香炉の中の灰にお線香を立てる(横にして置く)
となります。
浄土真宗系ではお線香は立てずに長香炉に寝かせて焚くか、土香炉の大きさに合わせてお線香を折ってから火をつけ、火のついた方を左にして灰のうえに寝かせます。
天台宗や真言宗では、香炉の中で3本のお線香が逆三角形になるように自分側に1本、仏壇側に2本のお線香を立てます。
お線香には直接火をつけずにローソクから火をうつします。
お線香に炎が残ることがありますが、お線香は煙とその香りが大切なので炎で燃やしてしまってはいけません。
注意すべき点は炎を消す時に、口で吹き消してはいけないという事です。
仏教では人間の口は穢(けが)れやすいという考えがあるので、仏様にお供えするものに人間の不浄な息をかけてはいけません。お線香の火は必ず手で扇いで消すようにしましょう。
宗派によって仏壇マナーは変わりますが、特に仏壇でのお線香供養は宗派だけではなく菩提寺や地域によっても香炉、お線香の本数や手向け方等がかなり異なるので注意が必要です。
心配な方は一度菩提寺やご家族に相談して、ご自分の宗派に合った正しい供養の仕方を教わっておくといいでしょう。