仏壇の選び方 【更新日】
仏壇のお供えは「香り・花・灯り・お水・ご飯」の五供(ごくう)をお供えします
仏壇には様々なお供え物を置いてご先祖様や故人を大切に供養します。実家に仏壇があって子供の頃から祖父母や両親のお供えのし方を見てきた方は、きっと基本のお供え物についてご存知だと思います。ただ、新たに仏壇を購入された方の中には、仏前に何をお供えしたらよいのか分からない方もいるでしょう。
日々の仏壇のお供えの基本は「五供(ごくう)」と言われます。
「五供」では仏前に【香・花・灯り・お水・ご飯】をお供えするのですが、何故この「五供」が大切だと言われるのでしょう。
「五供」以外にも特に法要時や命日などには、仏前にお菓子や果物を含めた特別なお供え物を供えます。しかし、こういったお供え物はどのようにお供えすればよいのでしょうか?
ここでは、仏壇でお供えする「五供」の意味や役割、お供え物の手順や方法などを注意点と共にご紹介します。
目次
仏壇にお供えする「五供」では宗派による方法の違いがあります
五供とは
仏壇のお供えの基本は「五供(香・花・灯燭・浄水・飮食)」と言われ、それぞれ仏前に線香、仏花、ローソク、水(またはお茶)、ご飯をお供えします。
忙しい日々の生活では線香、花、ローソクまではお供えできても、頻繁に入れ替えが必要な浄水や飮食のお供え物はなかなかできない方も多いかもしれません。ただ、お盆や故人の命日などの特別な日には、やはり五供で仏前供養するのというのが大切です。
五供を基本供養とすることは宗派や地域が変わっても共通しているのですが、供養に使う仏具や個数、供え方などは宗派によって異なるので少し注意が必要です。
宗派によって異なる仏具
基本的に五供には花立、香炉、火立の「三具足(五具足)」と茶湯器、仏飯器を合わせた5つの供養具を使いますが、浄土真宗で使用される仏具は色が決まっています。一般的に本願寺派(西)では黒仏具、大谷派(東)では金仏具が使用されます。真宗大谷派では鶴と亀のデザインが施された専用仏具もあります。浄土真宗系でない場合は、真宗専用の金色の仏具を選ばなければ問題ありません。
仏壇にお線香をお供えする「香供養」では香りで周囲を清めます
香り供養
仏壇ではお線香での香供養が欠かせません。香の煙は周囲を清め、供養する者の心身の穢れも浄める役割があります。お香の香りが部屋のすみずみまで行き渡ることは、全てのものに平等に接するという仏様の慈悲の心を表しています。更に線香の好香を通じて私達は仏様や故人と対話することができると言います。
香炉
香炉には様々な素材や形のものがありますが、浄土真宗以外の宗派では「前香炉(まえこうろ)」にお線香を立ててお供えします。 浄土真宗では、青磁製の「土香炉(どこうろ)」か「長香炉(ながこうろ)」にお線香の火をつけた側を左にして寝かせます。 真宗本願寺派の土香炉は「玉香炉」、真宗大谷派で使われる土香炉は「透かし香炉」と呼ばれます。香炉には「香炉灰」や「香炉石」を入れて使用します。
お線香
香り供養に使うお香は色々ありますが、日々の供養には煙が少なく香りもいい「匂い線香」が向いています。 お線香の数や供え方は宗派によって異なります。最近は安全性を考慮した電子型のお線香というのもあります。
宗派によるお線香の本数
真言宗・天台宗:3本の線香を立てて供えます。
曹洞宗・臨済宗・日蓮宗:1本の線香を立てて供えます。
浄土真宗(本願寺派・大谷派):1本の線香を1~2回折って寝かせて供えます。
浄土宗:お寺によって変わりますが、1本もしくは2本の線香を立てたり、1本の線香を2つに折って寝かせます。
なお、主に浄土真宗で使われる長香炉は、線香を折らずに寝かせて使用できます。
香り供養の際に注意する点
お線香は朝のお勤めの一番最後にお供えしますが、お線香につけた火が燃え続けている時に、口で火を吹き消すのはご法度です。
仏教では人間の口は穢れやすく不浄であるという考えがあるので、仏前では口は使わず手で扇いで火を消すことが基本です。
お線香に火をつけたマッチも吹き消さず、マッチ消し等を使いましょう。焚いたお線香は下げる必要はないので、燃え尽きるまでそのままにしておきます。
仏壇にお花をお供えする「花供養」は花の姿や香りで供養します
花供養
仏壇やお墓にお花を供えることを「供花(くげ)」、お供え物の花のことは「仏花(ぶっか)」と呼びます。新鮮で美しい花を仏前に捧げるのは、その花のように心を清く保って欲しいという仏様の教えや願いであると言われます。
仏壇の仏花は、祖先や故人の霊を花の姿や香りで供養するために供えますが、同時にお供えしている私達の心も穏やかなものにしてくれます。
花立(花瓶)
花立の色は浄土真宗本願寺派なら黒、真宗大谷派なら磨色や金色、それ以外の宗派の場合は金色以外を選びます。毎日水を入れ替えたり洗ったりする花立には、お手入れが楽な素材や形状のものがいいでしょう。
仏花
仏花に決まりはないので、庭の花や故人の好きだった花をお供えすることができます。ただ、派手な色の花、トゲや毒のある花、匂いの強い花、花粉や葉が落ちやすい花は避けましょう。
手に入れやすく日持ちのする菊や、水はけの良いカーネーション等は仏花に適した花です。花屋などで白・黄・紫を奇数本組合せた仏花を購入するのもいいと思います。
花供養の際に注意する点
仏壇にお供えした花の水は毎日取り替え、花立もできるだけ小まめに洗いましょう。花は水切りをしたり、花立に数滴洗剤を入れると長持ちします。枯れた花はすぐに取り替えましょう。
最近はお手入れが楽な造花や常花(じょうか)を飾る方も増えていますが、仏教には「花のいつかは枯れる様が人の世の無常を表現している」と言う教えがあります。特に浄土真宗系では生花がよいとされているので、少なくとも法事などの際には生花を供えましょう。
仏壇にローソクをお供えする「灯燭(とうしょく)供養」の灯りは「仏の智慧と慈悲」
「灯燭(とうしょく)」供養
仏壇にお供えする火のことを「灯明(とうみょう)」と呼びますが、その光は「仏様の智慧と慈悲」を象徴しています。灯明は拝む者の心の闇や煩悩を照らし出し、その全てを取り除く役割をもちます。
そして供養する者の心を引き締め、仏様の教えを守ろうとする気持ちを助ける働きがあるとも言われます。お盆に灯すローソクの火は故人の霊が迷子にならないためのあの世とこの世の架け橋の意味があるので、お盆中の火は絶やさないようにします。
火立(ローソク立て、灯立、燭台)
呼び方は様々ですが使い方は同じで、ローソクを立てて「灯燭供養」に使います。浄土真宗では仏壇の天井から一対吊り下げる「輪灯(りんとう)」も使われます。
ローソク
仏壇のお供えには白い洋ローソクを使うのが一般的ですが、日々の供養では5~10分位で燃え尽きるミニローソクが便利でしょう。
特別な日には、花などが描かれた美しい和ローソクやお供え物の形をしたローソク等を使うのもいいかもしれません。最近は安全性を考慮した電子型ローソクもよく使われます。
灯燭供養の際に注意する点
ローソクは朝お水やご飯をお供えした後に火を灯し、お勤めが終わったら火を消します。
お線香の時と同じくマッチやローソクの火を消す時には口で吹き消さず、手やマッチ消しを使って消すか、素早く安全に火が消せる「ローソク火消し」を使いましょう。
仏壇にお茶やお水をお供えする「浄水供養」は浄土真宗では方法が異なります
浄水供養
仏様の乾きを癒すために仏壇にお水やお茶をお供えするのが「浄水供養」です。これは仏様の清らかな心にあやかり自分達の心も洗いたいとの願いを込めて供えるものです。
茶湯器(茶器)、湯茶器(ゆちゃき)、湯呑(ゆのみ)
色々な呼び方がありますが、使い方は全て同じです。茶湯器はふたがついた湯呑で、高台に乗せるタイプやそのまま置くタイプがあります。通常は1つだけ置きますが、正式な場だったり、宗派や仏壇サイズによっては2つか3つ使う場合があります。
浄土真宗では
浄土真宗では「浄水」は供えません。極楽浄土には「八功徳水(はっくどくすい)」という八つの功徳を備えた水が溢れているので喉が渇くことはなく、現実世界の水を供える必要はないと言われてます。
浄土真宗では茶湯器は使わず「華瓶(けびょう)」という名の金銅・真鍮製の1対の壺に水を入れ「樒(しきみ)」または青木を挿して「香水(こうずい)」としてご本尊に供えます。
樒には魔除けの効力があるとされ、香水を供えることで浄土の「八功徳水」の清らかで美味しい水を表現し、中の水を浄らかに保つ意味合いがあると言われます。
お水・お茶
本来的には自然水が理想ですが、現在では水道水で一番水、お茶で一番茶としてお供えするのが一般的になっています。なお、仏前に供える水のことを「閼伽(あか)」や「功徳水(くどくすい)」と呼びます。
浄水供養の際に注意する点
仏壇のお水は常に新鮮な状態にしておきましょう。日々のお供えでは朝一番に仏壇に向かう際に、茶湯器の中身を差し替えます。
仏壇にご飯をお供えする「飮食供養」は同じものを食べて故人と繋がる意味があります
飮食供養(おんじきくよう)
仏様の空腹を満たすために仏壇にご飯をお供えするのが「飮食供養」です。ご飯は私達の生活に必要不可欠なものであり、私達が食べているものと同じものをお供えすることで仏様やご先祖様と繋がることができると考えられています。
仏飯器(仏器)
ご飯を入れて「飮食供養」に使う器で、全ての宗派で使われますが、浄土真宗系では仏飯器の数や、置く場所、ご飯の盛り方等が変わります。浄土真宗では通常は3つで、正式な場では4つの仏飯器を使います。
それ以外の宗派では通常時は1つ、正式な時には2つ使用するのが主流です。真宗大谷派では「仏器」という名前で呼ばれ、そこに「盛曹(もっそう)」という仏具を使って筒状にご飯を盛ります。
仏飯(ご飯)
仏壇にお供えするご飯のことを「仏飯(ぶっぱん)」または「香飯(こうはん)」と呼びます。朝と夕に炊きたてのご飯の一膳目を自分達が食べる前にお供えします。通常は炊きたてのご飯をお供えしますが、故人の好物や季節の旬、いただきもの等をお供えすることもあります。
仏器膳(仏器台)
お水やお茶を入れた茶湯器やご飯を盛った仏飯器をのせて、一段高くした状態で仏壇にお供えするためのお膳です。浄土真宗では「仏器台」を使います。
飮食供養の際に注意する点
仏教では殺生を嫌うため、ご飯以外の食べ物をお供えする時には肉や魚などは避けます。匂いのきつい食べ物もやめた方がいいでしょう。
お供え物は長時間仏壇に置くのではなく、仏壇に供えて手を合わせた後に下げて私達がいただくことが良いと言われています。特に暑い時期にはすぐに下げましょう。
法事や命日、盆正月には仏壇に特別なお供え物をします
特別な日の仏壇のお供え物
法事や命日、盆正月の際には、ご飯以外のものも使って盛大に「飮食供養」をします。飲食のお供え物には色々ありますが、仏飯、お餅、お菓子、果物の順に重んじられています。
霊供膳(れいぐぜん)・仏膳(ぶつぜん)
法事や命日の時には、仏壇に精進料理をお供えします。お膳には、親椀(ご飯)、汁椀(みそ汁等)、平椀(煮込み物)、壷椀(煮物やゴマ和え)、高皿(漬物)をのせて、箸をそえて仏壇にお供えします。
おはぎ・ぼたもち
春のお彼岸には「ぼたもち」、秋のお彼岸には「おはぎ」が欠かせません。
お団子
宗派や地域によって数や供え方などの違いがあるので、知っている人に確認しましょう。
仏壇のお供え物のお菓子や果物
砂糖菓子
「盆菓子」とも呼ばれるハスや菊の形をした落雁(らくがん)は、代表的な供養菓子です。
和菓子
どらやき、最中、おまんじゅう、栗おこし等。小豆を使ったお菓子は、仏壇のお供え物としてよく使われます。
洋菓子
クッキー、マドレーヌ、カステラ等。ケーキ等クリームがついた洋菓子は避けましょう。
せんべい・おかき
せんべいやおかきは、大きめで高級感のあるものを選びましょう。
ようかん・ゼリー
個装で日持ちのするゼリーやようかんは、特に夏場に重宝します。
果物
りんご、バナナ、オレンジ、ぶとう等。スーパー等ではカゴに入った「フルーツお供えセット」という物も販売されています。
お菓子や果物を選ぶ際に注意する点
お供え物は日持ちのする常温保存のものを選ぶのが良いです。お供え物は大切な仏前供養なので、置きっぱなしにしてはいけません。
仏壇にお供えした食べ物はできるだけ早く下げて頂いた方が良いとされますので、お供えの頂きものがあった時には、まずは仏様やご先祖様にお供えしてからお下がりを頂くのが基本で、その日の内に頂いても構いません。
お菓子や果物などは特別な器や供物台にのせて仏壇にお供えします
お供え物の供え方
お菓子などのお供えの盛り方には、特に決まりはありません。お供え物に使う特別な器や台にのせて、仏壇か仏壇前に設置した台の上に置いてお供えします。
お供え物は仏様を敬う気持ちを表すために、脚のついた器や台などを使って高くした状態で供えます。お供え物を置くための台や器は1対で使うのが基本ですが、その時にお菓子の種類や量が左右でバラバラになってしまっても問題ありません。
生菓子
直接のせると仏壇や仏具が汚れるタイプのお菓子は、器や台に半紙や白い紙を1枚はさんだ上に載せてからお供えします。
容器入り
ようかんやゼリー等は、仏壇を汚さないように容器からは出さずに供えます。その他のお供え物は、どれも食べられる状態にしておきます。
個包装
袋に入っているものは袋の口を開けておき、果物の皮はむいて食べやすい大きさに切って器に盛ります。
お供え物に使う特別な器や供養台
高月(高坏)
お菓子やお餅、果物などをのせる器で、1対で使います。
供花(きょうか・くげ)
浄土真宗では高月ではなく「供花」を使います。供花のデザインは、本願寺派は「六角」、大谷派は「八角」というようにはっきりと分かれています。
段盛(だんもり)
数段ある供物台で高月や供花と同じように対で使います。特に浄土真宗で仏壇にお菓子などを供える際に用いられています。
さとう盛り
砂糖でできたお供物で、高月や供花の上に飾ります。カラフルで見栄えがよく日持ちもするので仏壇のお供えに便利なお菓子です。お菓子の量が足りない時や仏壇を華やかに見せたい時に重宝します。
お供え物の順番
食べ物のお供え物の優先順位は仏飯、お餅、お菓子、果物です。中型以上の仏壇は3段に分かれているので、上段に仏飯、中段にお餅やお菓子、下段に果物というように飾ります。もしくは仏壇の前に卓や台を設置してその上に置くのもいいでしょう。
仏壇のお供え物は、仏様やご先祖様の毎日の供養に欠かせないとても大切なものです。たとえ日常の供養では難しくとも、できればお盆や命日の際には「五供」やお菓子や果物などをお供えしましょう。
とは言え、仏壇にお供えする物が特別なお膳や高級なお菓子である必要はありません。ご先祖様のおかげで、今日も飢えることなく過ごせることへの感謝の気持ちを込めて供えることの方がずっと大切です。