仏壇の選び方 【更新日】
日蓮正宗の仏壇は専用仏壇を使いご本尊は「曼荼羅図」
ご家族の誰かが亡くなり急に仏壇が必要になった時や、古くなってしまった仏壇を新しく買い替える場合、購入する前に確認したいのは『あなたの家がどこの宗派に属しているか』です。
なぜなら、宗派によって使用する仏壇や仏具、祀るご本尊やお参りの仕方などが変わってくるからです。
たとえば日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)では、他の宗派で使用されているような仏壇を使用しません。
日本仏教は様々な宗派に分かれているのですが、浄土真宗以外の宗派では仏壇の選び方には特に決まりがなく、一般的な仏壇店で購入することができます。
しかし、日蓮正宗では普通の仏壇店では取り扱っていない専用の仏壇が必要なのです。
この記事では、日蓮正宗の概要と、他宗派との仏壇の違い、日蓮正宗で使用される仏壇の種類についてのご紹介をします。
目次
日蓮正宗とは「南無妙法蓮華経」を宗旨とする鎌倉時代に日蓮大聖人により開かれた宗派です
日蓮正宗は、建長5年(1253年)に日蓮大聖人(にちれんだいしょうにん)が建立したことにはじまる宗派のひとつです。
日蓮大聖人の弟子である日興(にっこう)により開創され、以来750年の歴史を持つ、由緒正しい仏教の一宗派となっています。
「多宝富士大日蓮華山大石寺(たほうふじだいにちれんげざんたいせきじ)」を総本山とし、宗祖である日蓮大聖人を末法の本仏(ほんぶつ)と仰ぐのが特徴です。
日全部で700を超える寺院があり、アメリカや台湾を中心に、海外にも教義を広めています。
日名前がよく似ている宗派として日蓮宗があるのですが、こちらは鎌倉時代中期に日蓮大聖人が立ち上げた日蓮宗(日蓮法華宗)がいったん多くの門流に分かれた後、明治以降に統合された宗派です。
もとを正せば同じ日蓮宗なのですが、今では日蓮正宗とは考え方や仏壇・仏具の選び方や祀り方、安置するご本尊など、異なる点が多い全く別の宗派ですので混同しないように気をつけましょう。
日蓮正宗の仏壇は専用仏壇で厨子が内蔵されています
浄土真宗などの一部の宗派を除いて、ほとんどの宗派では仏壇の選び方に特に決まりはなく、どんな仏壇を購入しても問題ないとされています。
しかし、日蓮正宗では、他の宗派とは異なる専用の仏壇が必要になります。
というのも、一般的な仏壇では、仏壇内の須弥壇(しゅみだん)にご本尊をお祀りするのですが、日蓮正宗の仏壇には中に「厨子(ずし)」と呼ばれる小さなお社が設置されており、その中にご本尊を祀るのが正式とされているからです。
厨子(ずし)
厨子は長方形の箱形をしていて、屋根がついているものが多く、更には両開きの扉がついているのが特徴の仏具のひとつです。
中に仏像や経典、位牌などの大切なものを安置しておくために使用します。
もともと厨子は、中国で食べ物や書籍を入れておく戸棚として日常的に使用されてきたものです。
仏具としてではなく、インテリアとして広まっていました。
現在のように仏具として利用されるようになった経緯としては、大切なものを参拝するにあたり、ご本尊を少しでもいい場所に安置したいという想いからと言われています。
日蓮正宗の仏壇に設置されている厨子は、ご本尊を安置するためだけに使用します。
一般的な宗派では、ご本尊の下段脇に位牌を安置するのですが、日蓮正宗では位牌を葬儀の際にしか使用しないのです。
仏壇の厨子には、ご本尊だけを安置するように気をつけましょう。
日蓮正宗専用の仏壇は「厨子型」「家具調」「上置」から選べます
仏壇を購入する前に考えなくてはいけないのは、選ぶ仏壇のタイプです。
日蓮正宗専用の仏壇は、大きく3種類に分かれます。
ひとつは厨子型仏壇、もうひとつは家具調仏壇、そして上置仏壇です。
厨子型仏壇
日蓮正宗における一般的な仏壇で、仏壇自体に厨子が内蔵されています。
仏壇の扉の中に厨子扉と呼ばれる内扉が付いており、扉を開けた中にご本尊を安置するという形で使用します。
厨子扉は扉の中は、金色に装飾しているものが一般的です。
最近では、厨子扉の開閉がリモコン式になっているものもあります。
略式のものだと、扉を厨子型にして、厨子の代用としている仏壇も広く出回っています。
家具調仏壇
こちらも仏壇自体に厨子が内蔵されているのですが、一般家庭の家具のような外装になっているという特徴があります。
外扉を閉めると普通の家具のようにしか見えないので、洋服ダンスなどと並べても全く違和感がありません。
とはいえ、ご本尊をおろそかにしているわけではありません。家具調仏壇の厨子扉の中は、厨子型と同様に金色に装飾されているので、安心して使用できます。
上置(うわおき)型仏壇
上置型仏壇は、家具や専用台の上に置くコンパクトタイプの仏壇ですが、やはり厨子が内蔵されています。
コンパクトサイズなので、賃貸アパートやマンション、高齢者住宅に居住している方に人気の仏壇なのですが、コンパクトと言っても100m前後の高さがあるものが多く、とても存在感があります。
上置型仏壇には厨子扉が存在しないものもあります。その場合は、厨子の表面がガラス張りになっていて、そこからご本尊に参拝することになります。
日蓮正宗の仏壇に安置するご本尊は曼荼羅図の「紙幅本尊」
仏壇を購入したら、早速ご本尊を安置しましょう。
ご本尊は菩提寺から貸し下げていただき、それを仏壇の厨子内に安置することになります。
日蓮正宗におけるご本尊は、日蓮大聖人が創始した曼荼羅図『十界勧請(じっかいかんじょう)の大曼荼羅(だいまんだら)』です。
「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の題目を中心に、十界の名が記載された曼荼羅図になります。
しかし、大曼荼羅はこの世にたったひとつしか存在しないため、仏壇どころかお寺にも安置することができません。
そのため、現在、実際にご本尊として使用されるものは、法主(ほうしゅ・ほっす)によって書き写された書写本尊になります。
厨子の中に安置する形態は『形木本尊(かたぎほんぞん)』と呼ばれるもので、法主直筆の曼荼羅図を印刷したものになります。
このように、紙に書かれたご本尊を『紙幅本尊(しふくほんぞん)』と言い、表具を付けた掛け軸の形で、厨子の中に安置します。
日蓮正宗は日蓮大聖人を本仏と仰ぐ仏教の一派ですが、名前が似ている日蓮宗と混同されることがあります。
日蓮宗とは仏壇や仏具なども異なるので購入の際には充分注意が必要です。
購入したお仏壇の厨子の中には、ご本尊として曼荼羅図の掛け軸を安置します。
この曼荼羅図の掛け軸は、菩提寺から貸し下げていただくのが通常ですから、お寺様とのお付き合いも他宗派と比べて密接となるでしょう。
日蓮正宗は、他宗派に比べ教義が厳しいと言われています。
仏壇の選び方やご本尊の祀り方などを間違えないよう、充分注意するようにしましょう。