仏壇の選び方 【更新日】
お仏壇の向きや置く場所は宗派だけでなく部屋やお仏壇のタイプによって決めましょう
家の建て替えや引っ越しで、新たなお仏壇の配置場所(設置場所)を探している方は、お部屋の位置にしても、お仏壇の向きも最適な場所を選びたいと考えていらっしゃると思います。
ゆっくり決められれば良いのですが、急にご実家などからお仏壇を引き継ぐことになった場合はどうしたらよいでしょうか?
ご実家では仏間に置いてあったかもしれませんが、マンション暮らしの場合などでは、限られたスペースでのお仏壇の置き場所や向きなどを工夫しなければなりません。
お仏壇を配置する時に向きを気にされる方がいますが、この方角については実に様々な説や宗派によっての考えが存在します。
ここでは、お仏壇の向きに関する様々な説と宗派別の向き、そしてお仏壇の配置場所(設置場所)や向きを決める際に考えるべきポイントについて解説いたします。
目次
お仏壇の配置(設置場所)はお仏壇への向き合い方によって変わります
お仏壇をお部屋に置く時の位置や向きを考える前に、まずはあなたにとってお仏壇とはどういう役割を持っているのか改めて考えてみましょう。
仏様への信仰心
お仏壇の本来の役割は「仏様を祀って感謝の気持ちを表す」です。
仏教の寺院を模して造られたお仏壇には宗派によって異なる「ご本尊」が祀られます。
お仏壇にはお花を飾り、毎日新しいお水や炊きたてのご飯をお供えします。
そしてお仏壇の前に座り、ローソクの火を灯してお香を焚いてから、お勤めをします。
お仏壇を信仰のためのものと考えている場合、ご自宅の中で仏様の居場所として相応しい場所を選び、日々のお参りがしやすい位置、高さ、そして向きを考えなければなりません。
ご先祖や故人の供養
おそらく現在では、お仏壇は「亡くなった方のお位牌を置く場所」だと考えている方の方が多いでしょう。
もちろんお仏壇をご先祖や故人を中心に捉えることがいけない訳ではありません。
実際のところ、お仏壇にご先祖や故人のお位牌だけを祀っている方も多くみられます。
そして毎日お仏壇のお供え物を取替えて、お位牌に向かって手を合わせて今日あったことを報告したりするのでしょう。
お仏壇がご先祖や故人と対話をするための場所ならば、お仏壇の場所や向きは家族の生活スタイルから考えるといいでしょう。
家族が多く時間を過ごす部屋ならば、故人も寂しくなく、いつもご家族を見守り支えてくれるはずです。
実家から受け継いだもの
実家からお仏壇を受け継いだものの自分には信仰心はなく、かといって処分するのも気が引けて持て余している、という方もいらっしゃると思います。
確かにお仏壇は粗末に扱ってはいけないものですが、捨てなければいいというものでもありません。
もしお仏壇の仏様を祀ったり故人の供養をしたりできないのであれば、他のご親族の方で引き取れる方を探したり、思い切って処分をすることも検討してみた方がいいのかもしれません。
ホコリが積もっていたり、扉が開け閉めされないお仏壇は本来の役目を果たしていないのです。
もし大きくて邪魔な家具だと感じているのであれば、そこには必要のないものなのだと思います。
大型仏壇の配置(設置場所)は扉の向きも注意しましょう
お仏壇の配置(設置場所)や向きは、当然お仏壇の大きさや種類が関係してきます。
お仏壇の種類
まず、お仏壇には次の3つの種類があります。
唐木仏壇
黒檀(こくたん)や紫檀(したん)などで造られたものが多く、重厚で落ち着いた雰囲気を持つお仏壇です。
銘木の美しい木目を生かした造られ、仏間などの和室のお部屋にピッタリです。
金仏壇
白木で造られた本体外側には漆塗り、内部には金箔が施された豪華絢爛なお仏壇です。
金仏壇には蒔絵や彫刻などの日本の伝統工芸の技法を駆使して、荘厳な極楽浄土の世界が表現されています。
モダン仏壇
デザイン性の高い家具のような見た目なので「家具調仏壇」とも呼ばれます。
サイズや形、デザインが豊富なのも特徴です。
現代の住宅事情に合わせてスリムでコンパクトに造られたものが多く、リビングに置いてもお仏壇とは気づかれないオシャレな物もあるのでとても人気が高いです。
お仏壇のサイズや設置タイプ
更に、お仏壇は大きさや設置方法で2つのタイプに分けられます。
床置き型
昔からある床に直接設置するタイプの大型仏壇です。
「据え置き仏壇」や「台付き型仏壇」とも呼ばれます。
背の高い家具ようなサイズ感なので、お部屋にある程度のスペースが必要ですし、重量があるのでいったん設置する位置や向きを決めたら簡単には移動できないタイプです。
伝統的な唐木仏壇や金仏壇に比べ、モダン仏壇だと床置き型でもスリムなものが多いです。
上置き型
卓上タイプのお仏壇で最近は「ミニ仏壇」と呼ばれることが多いです。
タンスや棚の上にも置けるコンパクトサイズのお仏壇で、伝統的な唐木などの素材でできたものや、モダンタイプのものがあります。
床置き型と違って移動が楽なので、お部屋の家具の模様替えの時に、一緒にお仏壇の配置も替えることができます。
手元供養のためのお仏壇
手元供養とは亡くなった方の遺骨の一部を手元に残し、ご自宅の小さなお仏壇で供養するという新しい供養の形です。
手元供養用のお仏壇はシンプルな上置き型やパーソナル供養台が使われることが多く、お部屋の家具の上に簡単に設置できます。
デザイン性の高いタイプが多く、リビングに置いてもお部屋に馴染みます。
お仏壇の向きはお部屋の雰囲気も左右します
お仏壇の配置場所(設置場所)は「和室なのか洋室なのか」というのも重要なポイントです。
仏間
お仏壇を置くために作られた専用スペースなので、最も適したお仏壇の設置場所と言えるでしょう。
仏間にはいくつか種類があり、サイズや造りは地域によっても異なります。唐木仏壇や金仏壇などの伝統的な大型仏壇は、やはり仏間に置くと荘厳な雰囲気がでます。
床の間
床の間とは和室の上座に床を一段高くして造られた場所で、本来は掛け軸や花を飾ったりするスペースですが、家の中の上座とされている場所なので仏様を祀るのにとても適しています。
ただお仏壇の向きを逆にして床の間に面して置くと、下座に設置してしまうことになるので気をつけましょう。
ここにも伝統的なお仏壇を置くのが一般的ですが、床の間のサイズも様々なのでしっかり採寸しましょう。
畳の和室
家族の集まる居間や茶の間のお仏壇を置く方も多いです。ご先祖や故人を身近に感じられ、日々のお世話もしやすい場所です。
お部屋が狭い家ではタンスの上や押入れの上部を利用して、上置き型の仏壇を設置する場合もあります。
リビング
特にマンション等にお住まいの方は、お仏壇をリビングに置くことが多くなっています。
家族の生活の中心で、にぎやかな場所にお仏壇を置けば故人も寂しくないでしょう。
床に正座をしてお仏壇と向き合うというのは難しいので、お参りする時は専用の椅子を利用するのもいいでしょう。
ミニ仏壇の場合は、上置き専用台や家具の上に設置することもできます。モダン仏壇なら、洋風のインテリアにも調和するでしょう。
リフォーム
家の中にお仏壇に適切なスペースがない場合、お部屋をリフォームをするという方法もあります。
備え付けのクローゼットの中を改造してミニ仏壇を置いたり、押入れの中段板を撤去して床置き型のお仏壇を設置したり等、皆さん色々と工夫されているようです。
お仏壇を拝む向きに宗派の「推奨」はありますが「決まり」はありません
今度は、お仏壇を設置する時の向きを「方角(東西南北)」で考えてみましょう。
宗派によっては、様々な理由(説)から「お仏壇を置くときに望ましいとされる向き」を推奨しています。
臨済宗・曹洞宗
曹洞宗と臨済宗では、お仏壇を南向きにして置く「南面北座説」を推奨しています。
南面北座説(なんめんほくざせつ)
この説で南向きがいいとする理由は
・南は太陽が登る方角で縁起がいいから
・古代中国では高貴な人は南向き、家来は北向きで部屋に座ったから
など諸説ありますが、最もよく言われるのは
「お釈迦様は説法をするとき、南を向いていたから」です。
禅宗である曹洞宗や臨済宗のご本尊は「釈迦如来(しゃかにょらい)」なので「お仏壇のご本尊も南向きがいい」と考えます。
お仏壇を北の壁に設置して、ご本尊を南に向け、北向きでお参りすることが多いです。
天台宗・浄土宗・浄土真宗
お仏壇を「東向き」にして置く、「西方浄土説」をとる宗派です。
西方浄土説(さいほうじょうどせつ)
この説でお仏壇を東に向ける理由は、
・仏様は太陽が昇る東を向いていたから
・仏様のいる「極楽浄土」は西方にあるから
仏様がいらっしゃる西の方角(極楽浄土)に向かって礼拝するというとこから、阿弥陀如来をご本尊とする天台宗、浄土宗、浄土真宗ではお仏壇を東向きに配置します。
お仏壇を置く向きは同じですが、別の理由から東向きに置く場合もあります。
東面西座(とうめんせいざせつ)
こちらはお釈迦様の生まれたインドの慣習から来ています。
インドでは太陽の昇る東はおめでたい方角と考えます。
東は立身出世の象徴としても尊ばれ、一家の主は東向きに座ります。
更には日本から見てインドは西に位置するというのも関係があるようです。
真言宗
真言宗では「本山中心説」がとられます。
本山中心説(ほんざんちゅうしんせつ)
信仰している宗派の中心の寺院「総本山」がある方角の壁側にお仏壇を配置するやり方です。
こうすることで、自分は総本山の方を向いて礼拝することができます。
真言宗の総本山は、和歌山県の高野山「金剛峯寺(こんごうぶじ)」です。
地図などを参考に、自分の家から見てどの方向に高野山があるかで向きが決まるのですが、家の構造上お仏壇を正確な向きに設置しようとすると、壁から離れた不自然な置き方になってしまうのが難点です。
いずれにしろ、どの宗派でも推奨する方角はありますが、お仏壇を絶対にその向きに置かなければいけないという訳ではありません。
その他の宗派では方角に決まりはありませんが、気になる場合は菩提寺に聞いてみましょう。
宗派問わずオススメのお仏壇の向きは「東向き」か「南向き」
上記の宗派(臨済宗・曹洞宗・天台宗・浄土真宗・浄土宗・真言宗)以外の宗派の方や無宗派・無宗教だけれど方角を気にされる方は、以下の考え方を参考にするといいかもしれません。
お仏壇の向きの由来になった十方浄土
「十方浄土(じっぽうじょうど)」とは、「東南西北(東西南北)」「上下」「四維(北西・南西・南東・北東)」を合わせた全ての方角、つまり全世界をあらわしています。
「全ての法則は理(ことわり)を持っていて、東西南北、上下左右に良し悪しをつけてはいけない」というお釈迦様の説法から来ています。
あらゆる方向に仏様はいらっしゃるという考え方なので、お仏壇の方角はどちらに向けても正解なのです。
春夏秋冬説(しゅんかしゅうとうせつ)
これは、「東西南北」の方角を「四季の特徴」と結びつけた考え方で、風水のようにとらえてお仏壇の向きを決められる利点があります。
東向き(春):万物のはじまり
南向き(夏):実を結ぶ
西向き(秋):収穫の時期を迎える
北向き(冬):収める
この説でもお仏壇をどの方向に向けても問題ないことになります。
「特定の宗派ではないけれど方角は気になる」
「4方向よいと言われても、その中から決められない」
という方は最もポピュラーな「東向き」か「南向き」とするといいでしょう。
お仏壇の特徴から設置の向きを考えることも必要です
宗派による設置の向きを気にしない方は、お仏壇がもつ特徴から考えてみましょう。
お仏壇は木材から造られているものがほとんどです。
お仏壇を直射日光があたる場所や湿度が高い所に設置すると、乾燥や湿気で木がひび割れやソリを起こしてしまい破損の原因となってしまいます。
お仏壇によっては金箔や蝶貝などを装飾として使っている場合もありますが、装飾品も直射日光や湿度に弱いため、壊れてしまう可能性があります。
そこから考えると、お仏壇を設置するのは直射日光があまり入ってこない仏間や床の間は最適な置き場所と言えます。
居間やリビングに置く場合は、南向きにするとお仏壇を北の壁にくっつけて置くことになるので、窓からの直射日光を避けられ、風通しも良い配置となります。
よく「北向きにお仏壇を置いてはいけない」と言われますが、これは昔の一軒家は、陽の光がたくさん入るよう南向きに大きな窓が造られていたからです。
お仏壇を北向きにして置くということは、その採光の窓をさえぎる形になるだけでなく、直射日光が当たってお仏壇が傷んでしまうというのが理由です。
現在では家の造りも様々で、特にマンション等では、南向きの日光はあまり入らないけれど、西日がよく差し込むという間取りの場合もあるかもしれません。
家の中のお仏壇の配置や向きも、時代と共に変わってゆくものですね。
現実的に最近の住宅事情や生活形態から考えると、宗派で推奨する方角に合わせてお仏壇の向きを決めるというのは少々無理があります。
ですから、現在お住まいの環境でできる、お持ちのお仏壇のタイプにピッタリで、ご自分の生活スタイルや考え方に合わせて選ぶべきだと思います。
日々のお参りや供養が快適にできる「あなたにとっての最良のお仏壇の位置や向き」が見つかるといいですね!