仏壇の選び方 【更新日】
マンションという住空間に配慮した今どきの仏壇選びのポイント
一戸建てがあたりまえだった昔に比べ、今は住まいのかたちも多様化が進んでいます。
特にマンションに代表される共同住宅への考え方は大きく変化し、かつては一戸建てを持つまでの「仮の住まい」とされていたのが、今では最期を迎えるまで生活する「終のすみか」として選ばれています。
伝統的な日本家屋の一戸建てに比べ、一般的にマンションは機能性を重視したコンパクトな間取りで部屋数も少なく、どうしても狭くなりがちです。
また、構造は鉄筋コンクリート、内装は白壁とフローリングに代表される洋風の仕様が主流です。
仏壇は日常の住空間の中に置かれ、日々の暮らしに溶け込んできました。
マンション暮らしが特別なものではなくなった現代においては、全てがコンパクトで洋風という今どきの住宅環境に合わせ、仏壇の多様化も進んでいるのです。
マンションに仏壇を置く場合、どのような点に着目して仏壇を選び、またどういった配慮が必要なのでしょうか。
目次
マンションに暮らすというスタイルが日本人のスタンダードになってきた
「国勢調査」によれば、平成25年(2013年)現在の一戸建ての総数は住宅全体の54.9%と半数以上を占めていますが、マンションを含む共同住宅も42.4%と迫っています。
平成5年(1993年)からの20年間で、一戸建ての増加率18.4%に対して共同住宅の増加率が54.8%と大きく伸びた結果です。
共同住宅、特にマンションが支持される理由はさまざまですが、マンションに住まう人の多くは、一戸建てにはない「安全性」と「立地の良さ」をその理由にあげています。
今どきのマンションはオートロック完備、防犯カメラ設置が普通です。
管理人が常駐し、警備員が構内を巡回するなど、セキュリティに配慮されたマンションは人気です。
また、マンションは鉄筋コンクリートなどで造られており、一般に一戸建てより耐震性が高いとされています。
「立地の良さ」にも様々ありますが、特に重視されるのは駅から近いことです。
通勤・通学のしやすさに加え、駅前エリアには商店、銀行、公共施設なども集まり、生活の利便性が高まります。
駅に近いエリアは地価が高いので、広い敷地が必要な一戸建ては、マンションに比べ住居費が割高となり、住まいとしては敬遠されがちです。
今年4月の国土交通省の発表では、マンションに「永住する」と答えた割合は63%で、調査開始以来最高となりました。
一方、「いずれは住み替えるつもり」と答えたのは17%と過去最低で、マンションが「終のすみか」として選ばれている実態が明らかになりました。
マンションに仏壇を置きたいときの“狭さ”という問題
一戸建てからマンションへ住まいのありかたが変化しても、仏壇に手を合わせ、先祖や故人へ思いを寄せる日本人の心は変わりません。
しかし、マンションに仏壇を置く場合、必ずといっていいほど浮上する頭の痛い問題があります。それはマンション特有の“狭さ”です。
一戸建てならば、思い通りの広さや部屋数を持つことができますが、限られた敷地に多くの戸数が集約されるマンションではそうはいきません。
設計は、広さよりも機能性が重視しされ、一戸建てに比べればどうしても手狭なパッケージングとなってしまいます。
ましてや伝統的な日本の家にあった「仏間」をマンションに求めることは困難です。
マンションの限られたスペースをやり繰りし、昔ながらの荘厳な大型の仏壇を置くことも悪くはありませんが、その他の家具・調度とのバランスという問題が生まれます。
生活家電や家具類ならば、その“狭さ”を考慮した商品を購入したり、配置をあれこれ工夫することがマンション暮らしでは当たり前ですが、旧来型の仏壇は取り残されてしまいます。
マンションの“狭さ”が気にならない「モダンミニ仏壇」という選択
家具や家電品を購入する際には、それが置かれる空間との整合性を考えます。
ならば仏壇も、マンション特有の“狭さ”を考慮した選択や工夫ができないでしょうか。
仏壇にはタンスや机、サイドボード、出窓などに置ける卓上型のものがあり、「モダンミニ仏壇」と呼ばれています。
幅はおおむね30センチから60センチ、奥行き25センチから45センチ、高さは40センチから60センチとコンパクトで、サイズのバリエーションも豊富ですから家具のサイズ感や使えるスペースに合わせて選ぶことができます。
重さも10キロ程度と下に置かれる家具にそれほど負担がかかるものではありません。
女性一人でも運べる程度ですから、部屋の模様替えなど移動の際も苦になりません。
既存の家具の上にスペースがなかったり、家具との組み合わせに違和感を感じるという方には、専用の「仏壇台」の使用をおすすめします。
上置きの仏壇との調和に配慮されたデザインを特徴とし、十分な強度も確保されています。
収納性の高いもの、スツール(腰掛け)が付属し座ってお詣りできるものなど様々なタイプが用意されています。
マンションに仏壇は置きにくい? 日本に定着した洋風のライフスタイル
マンションに仏壇を置きたいとき、頭を悩ますもう一つ問題が、洋風の住空間との相性です。
家に仏壇を置く習慣が一般化したのは江戸時代とされています。
日本の伝統的な仏壇のイメージは江戸の昔から受け継がれてきた訳ですから、マンションに代表される現代的な洋風家屋と仏壇のイメージにミスマッチが生じるのは仕方のないことかも知れません。
「和室」があれば、そこに仏壇を置くのが最もしっくりくるでしょう。
しかし、マンションには「和室」の設定がない物件が年々増えています。新築の建売り一戸建て住宅にしても「和室なし」「オールフローリング」などの物件の売れ行きが伸びているそうです。
洋風のライフスタイルは、日本人にしっかりと定着しています。
マンションでは仏壇選びも好みに合わせて自由自在に
「モダンミニ仏壇」は、そのコンパクト性に目がいきがちですが「ミニ」であると同時に「モダン」であることを改めて強調したいと思います。
「モダン」とは和風はもちろん、洋風の住空間にもマッチするそのデザイン性の高さを意味しています。
その特徴の第一は、伝統を踏まえながら、住空間に自然に溶け込むスタイリッシュなフォルムです。
観音開きの内側にお位牌のほか必要な仏具の一式がバランスよく配置される伝統的な形姿を継承しながら、直線を主体とした洗練されたスタイルは、それ自体が高級洋風家具といえるほどです。
木目を生かしたフローリング加工、アンティーク風の継ぎ目金具や、内部照明にはLEDを用いるなど、細部にもこだわった様々な仕様が登場しています。
第二の特徴は豊富なカラーバリエーションです。
「ダークブラウン」や「ブラック」といった和にも洋にも合うベーシックな色合いが主流ではあるものの、近頃は明るい色合いの仏壇も増え、好みに合わせて選ぶことができます。
昔はあまり見ることのなかった「ホワイト」の仏壇などは、先決間もあり部屋が広く明るく見えることから選ぶ人が増えています。洋風の家具とも合わせやすく、マンションのリビングに仏壇を置く方を中心に人気です。
「ワインレッド」「パルテルピンク」「パステルグリーン」といった、よりデザイン性を追求したカラーもあります。
こだわりのインテリアカラーや好みの家具が決まっているのなら、迷うことなくそれらを選ぶでしょう。好みのカラーによる統一感は、心の落ち着きにつながります。
マンションに仏壇を置く際には、狭い空間を有効に活用でき、洋風化した現代のライフスタイルにもマッチした「モダンミニ仏壇」が最良の選択です。
「モダンミニ仏壇」は、もはや現代の定番と言ってもいいでしょう。
ただ、マンション住まいであっても十分なスペースが確保できるのであれば、床置きで背の高い従来型の仏壇も選択肢に入ってきます。
洋風の住空間にもマッチした「モダン」タイプのものも多数あります。
一戸建てからマンションに転居した場合は、古くからあった仏壇を置ける場所が新居に確保できるかどうか、まずは検討してください。
「住まいに合わないので仏壇は置かない」ではなく、「仏壇は置きたい。できればライフスタイルに合ったものを」と考えてみてください。
最も大切なのは、先祖に感謝し故人を偲ぶ心を持ち続けることです。
仏壇は、その拠り所となるものです。
だからこそ仏壇は、日々の暮らしの中に当たり前のものとして溶け込んでいるのでしょう。