仏壇の選び方 【更新日】
仏壇に鐘が置いてある理由は澄んだ音にのせて供養を届けるためです
仏壇においてある鐘は梵音具(ぼんおんぐ)という種類の仏具です。
呼び方は宗派により違いがあり「鐘(かね)」や「リン」「おりん」と呼ばれます。
仏壇には必ず置いてあるこの鐘には、どのような役割や意味があるのでしょうか?
使い方は備え付けのリン棒で叩いて音を鳴らすというシンプルな使い方ですが、鳴らすタイミングはいつ鳴らせばよいのでしょうか?
仏具にはそれぞれ意味や使い方、タイミングなどがあります。
宗派によっても使い方や呼び名が違ったりすることもありますが、鐘の役割を果たすリンにも宗派による違いはあるのでしょうか?
仏教の事をあまりご存知無い方でも、必ずその存在は知っている仏具がこの鐘「リン」です。
ここでは仏壇の鐘「リン」の果たす役割や意味をご説明いたします。
目次
仏壇の鐘の役割は元々はお経の区切りを知らせるものでした
仏壇の鐘「リン」は、禅宗で読経の開始と終了の合図に使われていたものです。
他宗派にも伝わって使われるようになりましたが、基本的な使い方は同じです。
読経の始まりと終わりの合図の他に、読経の途中でリズムを整えることにも使われます。
ご僧侶用のお経が書いてある「経本(きょうほん)」には、楽譜の様に「ここで鐘を鳴らす」「ここでは2回鐘を鳴らす」という指示が「●」の記号で書いてあるものもあります。
もう一つには「音程をあわせる」役割があります。
読経の音程はドレミファ音階の音程でいう「レ」の音に近く、鐘の音も「レ」の音を基準に作られています。
このように、お寺様では読経時の合図、リズムや音程の調整という本来の用途を主として使われています。
ですが、ご家庭の仏壇で読経をする方も少なくなりました現在では、本来の意味で鐘を鳴らすことではなく、仏壇の前に座り供養を始めるとき、線香をあげたり、手を合わせる際に故人へお知らせするように鐘を鳴らす、という使われ方が非常に多いです。
このような使われ方が正式と認識していらっしゃる方も多く、また、それが一概に間違いであるということでもありません。
本来の使い方と違うのは確かですが、ご家庭の仏壇で鐘をならすタイミングに正解は無く、また時代の変化とともに変わってきているものでもあります。
仏壇の鐘には邪気払いと供養を届けるという意味があります
仏壇に設置されている鐘「リン」の本来の役割は「お経の区切りを知らせる」というものでした。
それでは仏壇の鐘を鳴らすことにはどの様な意味があるのでしょうか?
毎日の仏壇の前で行うご供養の中で、鐘を鳴らす意味は2つあると言われています。
澄んだ音で場を清める
鐘を打ち鳴らすと仏壇を中心に澄んだ音が周りの邪気を払い清めると言われています。
邪気というものは直接人間の目には見えないものですから、同じく目に見えない「澄んだ鐘の音」で邪気を祓って清めるということですね。
音にのせて供養をとどける
仏壇の鐘を打ち鳴らすと、美しい音色が響き渡りますが、その音色は長く長くつづく余韻が特徴でもあります。
いつまでもどこまでも続くような音色は、その音にのせて供養の祈りを極楽浄土まで届けるものと信じられています。
仏壇の鐘の由来は「祇園精舎の鐘の聲」
仏壇の鐘は、元をたどるとインドにあった寺院「祇園精舎(祇樹給孤独園精舎、ぎじゅぎっこどくおんしょうじゃ)」に設置されていた「銀の鐘」に由来します。
この鐘は僧侶が亡くなりそうなタイミングで鳴らされていたということです。
「平家物語」の冒頭の詩
“祇園精舎の鐘の聲、諸行無常の響あり。沙羅雙樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。”
にも登場する「祇園精舎の鐘」がこの銀の鐘です。
仏壇は寺院を模した物ですが、鐘も寺院の鐘を模しており、当時からも鐘の音色にのせて祈りを届ける意味合いで使われていたことがうかがえます。
同時にこの鐘の音は、高らかに鳴り響き、減衰して消えてゆく、仏教の「諸行無常」の教えを表す物でもあるのです。
仏壇の鐘「リン」の音色の違いは素材・サイズ・鳴らし方
供養の祈りをその音にのせて故人のいる極楽浄土へ届ける鐘「リン」。
「梵音具」という音を出す仏具ですが仏具の鐘には、その音色にも違いがあります。
大きさによる音色の違い
仏壇にある鐘から寺院にある吊り下げ型の大きな鐘まで様々な大きさがあります。
大きな鐘ほど低い音がでて、小さな鐘ほど高い音が出ます。
ここでは小さいサイズから順番にご説明させていただきます。
・印鏧・印金(いんきん)
鐘と布団に持ち手となる柄がついている携帯用の鐘で、ご僧侶がお使いになります。
お墓でのご供養時などに使われ、小さいながらも澄みきった存在感のある音色により場の空気を清めます。
サイズ:4.5cm~
・鐘(かね)、リン、おりん
ご家庭の仏壇にある鐘のサイズ。
形は「鉢型」と「壺型」が主流です。
サイズの種類も豊富で、音色も様々です。
サイズ:6.0cm〜
・磬子(きんす・けいす)
寺院用の大型の鐘。
幾重にもにじむ様な残響の低い響く音色で、一般の家庭よりも天井の高い寺院の空間にも全体に広がる深い音がします。
サイズ:18cm〜
他には吊り下げ式の寺院の鐘や、木製の木魚(もくぎょ)、などがあります。
他にも音色を左右するものとして鐘本体だけではなく、鐘を叩く「リン棒」や鐘を乗せる「リン座布団」によっても音は変わってきます。
特にリン棒は木製むき出しのものより、布巻や革巻きの物の方が、残響の余韻が長くなります。
鳴らし方による音色の違い
ご僧侶が使うような印金や磬子とは違い、ご家庭の仏壇の鐘の良い音がする鳴らし方は、リン棒の持ち手を上にして持ち、あまり力を入れず、鐘の口の縁の部分より少し下の部分を叩きます。
この様に叩いていただきますと、残響の長い、透き通った綺麗な音が鳴り響きます。
また、縁の外側を叩くと澄んだ音になり、内側を叩くと柔らかい音になります。
鐘の縁を直接リン棒で叩くと音が響きませんし、鐘が傷んでしまいますので気をつけましょう。
仏具の鐘の鳴らし方は力を抜いて心をこめて。同じ場所を叩き続けないようにしましょう
素材による音色の違い
仏壇の鐘に使われる素材によっても、鐘の響く音色は大きく変わります。
真鍮
銅と亜鉛の合金で、安価で加工がしやすい特徴があります。
多くの仏壇用の鐘は真鍮が使われています。
シルジン青銅
亜鉛とケイ素の合金です。
沙張(さはり)
銅・錫・鉛の合金です。
砂張・沙張・砂波理・佐波理・響銅と様々な表記がありますが音がよく響き、長年使えば使うほど音が良くなると言われ最高級品とされています。
非常に硬い金属の為、残響が長い良い音が鳴りますが、製作には高度な技術が必要です。
また、高い硬度の為、同時にもろく割れやすくなります。
落としてしまうとヒビが入って音が変わってしまったり、割れてしまう事もあります。
他にも、銀や金を使った鐘もありますが非常に高価である為、あまり一般的ではありません。
本来の意味ではお経の区切りの合図としてつかわれていた仏壇の鐘ですが、昨今の日々のご供養では読経をする方は多くはありません。
そのため、本来の使い方以外の使い方が主流となってきています。
ですが、ご家庭の仏壇であっても、寺院の鐘であっても、大きさや音色、時代や場所が違っても、場を清め、供養の祈りを故人へ届けるという古来からの意味は変わっていません。