仏壇の選び方 【更新日】
浄土真宗の仏壇への仏具の伝統的な飾り方と略式的な飾り方を流派別に解説
浄土真宗は日本国内における仏教系の宗教において、もっとも信者数の多い宗派です。
その浄土真宗は多くの分派があり、その分派ごとにお仏壇にも特徴がみられます。
例えばお仏壇に安置する御本尊や脇侍の組み合わせや、使用する仏具や並べ方にも違いがあります。
このように、浄土真宗でお仏壇に御本尊や仏具を祀るときは、自身の宗派に配慮が必要です。
加えて、最近ではお仏壇の多様化に合わせた配慮も必要になっています。
そこで今回は、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、それぞれの流派別にお仏壇への仏具の並べ方を解説します。
大きめのお仏壇の場合は伝統的な飾り方を、小さめのお仏壇の場合は略式的な飾り方を選ぶこともできます。
浄土真宗の御三尊の組み合わせと祀り方
「御三尊(ごさんぞん)」とは、御本尊と脇侍(左脇侍・右脇侍)のことです。
浄土真宗では、御本尊は「阿弥陀如来」様と定められていますが、脇侍は分派ごとに差異が見られます。
ご自身の宗派に合わせて、適切な組み合わせで祀る必要があります。
お寺様とお祀りする形式をご相談し、決めていきましょう。
また御三尊の形態としては「仏像」「絵像」「名号」の3つがあります。
浄土真宗ではどの種類の御三尊を祀るべきなのか、はたまた組み合わせるかも、分派ごとに違いがみられます。
なお、お仏壇店などで仏像を購入して祀る場合、お寺様の「佛点検(ぶつてんけん)」が必要なこともあります。
最近ではその例は減ってきているのですが、事前にお寺様へお伺いし、必要なら依頼されると良いでしょう。
浄土真宗本願寺派の御三尊の祀り方
浄土真宗本願寺派の御三尊は、中尊に「阿弥陀如来」様、左脇侍に「蓮如聖人」、右脇侍に「親鸞聖人」をお祀りします。
浄土真宗本願寺派は絵像本尊が多いとされていますが、仏像・名号でお祀りすることも可能です。
真宗大谷派の御三尊の祀り方
真宗大谷派の御三尊は、中尊に「阿弥陀如来」様、左脇侍に「九字名号」の脇掛、右脇侍に「十字名号」の脇掛をお祀りします。
尊も名号とする場合、「六字名号」の掛軸を用います。
真宗大谷派は名号本尊が多いとされていますが、仏像・絵像でお祀りすることも可能です。
浄土真宗で使用する仏具
「具足(ぐそく)」とは、仏具の組み合わせのことです。
基本となるのは「三具足(みつぐそく)」と呼ばれ、「花瓶(かひん・花立)」・「土香炉」・「ローソク立て(火立・燭台)」を指します。
また、特に法事やお盆などの、より正式な場では「五具足(ごぐそく)」を用います。
五具足は三具足に花瓶とローソク立てを1つずつ足したものです。
またこのような場では「五供(ごくう)」を行うことも基本となります。
五供とは、「花供養」、「灯り供養」、「香り供養」、「浄水供養」、「飮食供養(おんじきくよう)」のことです。
五供に必要な仏具としては、三具足や五具足に加えて「仏器・仏飯器(ぶっき・ぶっぱんき)」も必要です。
なお、浄土真宗の場合、浄水供養の考えがないものとされており、「茶湯器(ちゃとうき)」は用いないものとされています。
さらに浄土真宗の場合、三具足や五具足に加えて、「四具足(しぐそく)」も必要となります。
四具足はお仏壇の上(須弥壇、しゅみだん)に「上卓(うわじょく・じょうたく)」を置いて飾ります。
ただし、最近ではお仏壇の多様化により、略式的な設置とすることも増えています。
加えて、浄土真宗の場合は卓に敷きかける「荘厳具(しょうごんぐ)」の「打敷(うちしき)」は、三角形のものを用います。
また「輪灯(りんとう)」は、お仏壇の上部から吊り下げる照明具で、左右対にして飾ります。
本願寺派では「菊輪灯」を用いますが、大谷派は吊り下げた油皿に輪状の模様がついた比較的簡素なものを用います。
「供笥(くげ)」は、「御仏供・御仏飯・御華束(おぶく・おぶっぱん・おけそく)」をお供えする仏器です。
主に小餅などをお供えします。
本願寺派の供笥は六角形、大谷派の供笥は八角形となります。
お供えする場所は須弥壇の左右に、面の部分を正面に向けて行います。
また浄土真宗では「梵音具(ぼんおんぐ)」として、おリンを「経机(きょうづくえ)」に設置します。
加えて真宗大谷派では、ローソク立てとして「鶴亀燭台(つるかめしょくだい)」を用います。
鶴亀燭台は亀の甲羅の上に鶴が片足で立っている姿をしたローソク立てです。
左右で1対となりますが、左側の鶴のくちばしは閉じており、右側の鶴のくちばしは開いています。
なお浄土真宗では、「過去帳」や「法名軸(ほうみょうじく)」を用います。過去帳は見台に安置し、法名軸はお仏壇の両側の壁にかけます。
どちらとも御先祖の命日などが記されます。過去帳は常時見台に安置することも、ご法事などの正式な場のみ安置することも両方あります。
過去帳と法名軸両方を飾ることも、片方のみを飾るのこともあります。その場合、どちらでも構いません。
浄土真宗ではお位牌は、基本的には祀りません。
ただし、地域によったり、お寺様のご意向などによって差異があります。
浄土真宗のモダン仏壇への、略式的な仏具・具足の飾り方
浄土真宗では金仏壇が推奨されていますが、最近はモダン仏壇を使用する方も多くなってきました。
スリムに作られたモダン仏壇の場合、仏具を安置する空間に制約があります。
内部のつくりは段数こそ3段はあるものの、奥行きなどに制約があるため、新たに場所をとる「机・卓」などを設置することは難しいという事情があります。
そのため、お参りに必要な仏具に限定して飾ることも最近では増えてきました。
もちろん、略式的な飾り方であるからといって、御信心に差がある訳ではありません。
実際にお仏壇へ仏具を並べる場合、まず御三尊の前に「仏器膳(ぶっきぜん)」を敷き、仏器を置きます。
その両脇に1対の「高杯(たかつき)」を置きます。
最下段に左から、花瓶、線香差し、マッチ消し、土香炉、ローソク立て、おリン、見台(けんだい)と並べます。
土香炉は本願寺派では「玉香炉」、真宗大谷派では「透かし香炉」を使用します。
もしミニ仏壇などで3段目がない場合でも、2段目に手前と奥で置く場所を分け、同じような配置で設置します。
この時、花瓶には平時は生花か常花をいけ、見台の上に「過去帳」を安置します。
おリンはリン台の上に置きます。
なお法事などの正式な場では生花を生けるようにしましょう。
浄土真宗における本仏壇や金仏壇への仏具の伝統的な飾り方
続けて浄土真宗本のお仏壇への伝統的な仏具の飾り方を解説します。
三具足で飾るのか、それとも五具足で飾るのかを決め、加えて四具足を飾ります。
四具足の飾り方
浄土真宗本願寺派の四具足は「火舎香炉(かしゃごうろ)」、「華鋲(けびょう・華瓶)」1対、「ローソク立て」の4つです。
対して真宗大谷派の四具足は「火舎香炉」、「華鋲」1対、「仏器」の4つです。
それぞれ上卓に設置します。上卓は「宮殿(ぐうでん)」に一番近い卓で、宮殿の手前に設置されます。
上卓の中央には、火舎香炉を置きます。
火舎香炉を向ける面は模様のある面か、3本ある脚のうち、1脚が手前側に、残り2脚が後ろ側になるよう設置します。
華瓶には「樒(しきみ)」と呼ばれる香木を活け、「香水(こうずい)」として上卓の左右へ、火舎香炉を挟んでお供えします。
なお浄土真宗本願寺派ではローソク立てを火舎香炉の奥側へ設置します。
対して真宗大谷派では仏器を火舎香炉の奥側へ設置します。
三具足の飾り方
浄土真宗では、四具足に加えて、三具足か五具足を加えて祀ります。
三具足で祀る場合、「前卓(ぜんたく)」へ設置します。この時、左側から「花瓶」を、中央に「土香炉」を、右側に「ローソク立て」の順で設置します。
前卓はお仏壇の中に設置される卓の中でも、最も私たちに近い側に設置される卓です。
また、真宗大谷派ではローソク立てには「鶴亀燭台」が用いられます。
鶴のくちばしは開いており、左側を向けて設置されます。
五具足の飾り方
五具足で祀る場合、前卓の「中央に土香炉、その左右に燭台、更に外側に花瓶」を配置します。
ただし燭台に関しては真宗大谷派の場合は左右に違いがあるため、注意が必要です。
この時、鶴亀燭台の両鶴を向かい合わせ、かつ右側の燭台は鶴のくちばしが開いた方を設置します。
五具足を購入して三具足で設置する場合、注意したいものです。
ご自身の宗派に合わせたお仏壇の飾り方、ご理解できたでしょうか。
お仏壇には様々な作法があるため難しいと感じる方は多いことでしょう。
されど浄土真宗の宗旨を学び、御信心の心を持ってお参りを続けることこそ、最も大切なことではないでしょうか。
そのため、お仏壇の飾り方に関して神経質になられる必要はございません。
ただそれでも、より正式な作法・飾り方が気になる方は、ご住職様へお伺いしてみたり、私共お仏壇の専門店・専門家にお声がけして頂けますと幸いです。