仏壇の選び方 【更新日】
仏壇のご本尊は宗派によって変わるので菩提寺に確認しましょう
仏壇には、ご本尊が祀られているものです。
ご本尊の仏像は、仏壇の中央部に安置されます。
と聞くと「うちの実家の仏壇には掛け軸しかかかっていないけど?」という方もいらっしゃるでしょう。
そうです。仏壇のご本尊には「仏像」と「掛け軸」があります。
でも、その違いとは何なのでしょう?
きっと新しく仏壇を購入しようと考えている方は、仏壇の通販サイトなどを見ていて、仏像と掛け軸のどちらにしたらいいのか悩んでしまうと思います。
そもそも、ご本尊とは何なのでしょうか。
仏壇に必ず必要なのものなのでしょうか。
仏壇を購入する前に知っておいた方がいいですよね。
ここでは、仏壇に祀るご本尊の意味や宗派に合わせた正しいご本尊の選び方などについてご紹介いたします。
目次
仏壇に祀るご本尊は信仰の中心になるもので仏像も掛け軸も役割は同じです
ご本尊とは
仏教の各寺院や信徒の家庭の仏壇の中央に祀られているのが「ご本尊」です。
ご本尊とは最も重要視される信仰の対象になる仏像や掛け軸のことで、宗派によって仏壇に祀るご本尊が異なります。
ご本尊の形
ご本尊にはいくつかの形があります。
・仏像
・宗教的絵画
・掛け軸(仏絵や曼荼羅など)
・書
この中でも代表的なものは「仏壇」と「掛け軸」です。
各宗派の仏壇のご本尊としては主に如来が安置されますが、宗派によって異なる如来を祀ります。
仏像と掛け軸の違い
ご本尊には仏像と掛け軸がありますが、どちらも同じ役割をもっています。
真実から来た者である「如来」を彫刻で表したのが仏像で、絵像としたのが掛け軸です。
なお、日蓮宗のご本尊は「曼荼羅(まんだら)」になります。
仏壇に祀るご本尊の如来(にょらい)は宗派で異なります
仏壇に祀られるご本尊は宗派によって変わります。
宗派別のご本尊
阿弥陀如来(あみだにょらい)
同じ阿弥陀如来でも、宗派によってご本尊の像が多少異なります。
浄土宗(舟阿弥陀如来)
浄土真宗本願寺派(西阿弥陀如来)
真宗大谷派(東阿弥陀如来)
天台宗(座阿弥陀如来)
天台宗は特定の本尊を設けていませんが、通常は阿弥陀如来を祀ることが多いようです。
大日如来(だいにちにょらい)
真言宗
釈迦如来(しゃかにょらい)
臨済宗、曹洞宗
曼荼羅(まんだら)
日蓮宗
仏壇のご本尊の祀り方
宗派によって祀るご本尊が変わっても、仏壇への祀り方は基本的に同じになります。
ご本尊が仏像の場合は仏壇中央の「須弥壇(しゅみだん)」に安置し、掛け軸の場合は中央奥の壁に掛けて祀ります。
ご本尊をより丁寧に祀るには、仏壇中央に安置したご本尊の両脇に宗派で定められた「祖師像(そしぞう)」を祀ります。
日蓮宗では仏教の世界を文字で表した「大曼荼羅」をご本尊として中央奥の壁に祀りますが、その手前に日蓮聖人像を安置することもあります。
仏壇のご本尊の両脇に祀る祖師像も宗派によって変わります
祖師像(そしぞう)
祖師像は、ご本尊の教えを補佐する役割の菩薩や明王、天部などの肖像のことです。
宗派の開祖や高僧である「祖師」は彫刻で表された仏像、肖像画で表された掛け軸があり、ご本尊と同様に宗派によって変わります。
祖師は、最高地位の「如来」の補佐的な役目をもち、「菩薩」「明王」「天部」に大きく分かれます。
菩薩:悟りを求める者
明王:如来の命を受けて調伏や救済を行う者
天部:仏敵から人々を守る者
正確には仏像と共に祀る祖師像のことを「脇侍(きょうじ・わきじ)」と呼び、ご本尊の両脇に掛ける掛け軸のことを「脇掛(わきがけ)」と言いますが、実際には彫像である脇侍のことも含めたご本尊の左右に祀る像を「脇掛」と呼ぶことが多いです。
宗派別の脇掛
祖師像は宗派によって左と右の組合せが異なるので、自分の宗派のご本尊に合わせて選ぶ必要があります。
(左右は向かって左および右)
浄土真宗本願寺派(西)
左「蓮如上人」右「親鸞聖人」
真宗大谷派(東)
左「九字名号」右「十字名号」
真言宗
左「不動明王」右「弘法大師」
天台宗
左「伝教大師」右「天台大師」
浄土宗
左「法然上人」右「善導大師」
曹洞宗
左「常済大師」瑩山(けいざん)右「承陽大師」道元(どうげん)
臨済宗
「臨済宗十四派」と言われる臨済宗の両脇侍は、各派によって異なるので確認が必要です。
左「普賢菩薩」か「観世音菩薩」が多い
右「文殊菩薩」か「達磨大師」が多い
日蓮宗
左「大黒天」右「鬼子母神」
自分の宗派のご本尊や祖師像に自信がない時には、菩提寺や仏壇店などに相談することをお勧めします。
仏壇のご本尊は魂入れをという供養を行ってから祀ります
購入したご本尊は仏壇に安置する前に、菩提寺で魂入れをしていただきます。
魂入れ(開眼供養)
仏壇店などで購入した仏像は、菩提寺の住職に「魂入れ(たましいいれ)」をしていただく必要があります。
魂入れは、宗派によって「お性根入れ」「入仏式」「入魂法要」とも呼ばれる開眼供養(かいげんくよう)の事です。
この魂入れをすることで、ただの彫像や絵であった仏像や掛け軸をご本尊にした状態で仏壇にお祀りします。
魂抜き(閉眼供養)
使わなくなったご本尊は開眼供養で入れた魂を抜いてから処分するのですが、これを「閉眼供養」または「お性根抜き」と言います。
魂抜きを行うことでご本尊の仏像は「ただの木の塊」、そして掛け軸は「ただの絵」に戻り、処分ができるようになります。通常は魂抜きも菩提寺に依頼します。
浄土真宗では開眼供養ではなく、「入仏慶讃(にゅうぶつきょうさん)法要」や「入仏法要」、または「御移徙(ごいし、おわたまし)」と呼ばれる法要を行います。
これは、ご本尊を迎えて仏法にふれる新たな生活が始まることを祝うための法要です。
なお、仏壇を買い換える時や古くなって傷んだご本尊を専門店に修繕に出す時、引っ越しの時にも、いったんご本尊の魂を抜かなければなりません。
そして仏壇に戻す前に、菩提寺で再び魂入れをする必要があります。
お焚き上げ
閉眼供養を行って魂が抜けたご本尊は「ただの木の塊や絵」として扱えるので、一般の家庭ごみとしても処理できるのですが、心情的な理由で菩提寺やご供養仕舞い専門業者に依頼して「お焚き上げ」などの焼却処分をしてもらうのが一般的です。
仏壇に仏像を祀るか掛け軸を祀るかは自由ですが、事前に菩提寺に確認しましょう
以前は仏壇に基本的には仏像を祀る宗派と掛け軸を祀る宗派という傾向がありました。
しかし宗教観や生活スタイルが多様化している現代のニーズに合わせ、最近は仏像と掛け軸のどちらを祀っても問題ないとする宗派がほとんどになっています。
ただ、ご本尊の掛け軸は本山から迎えた裏に陰があるものだけを認めるという浄土真宗系のお寺や、菩提寺から曼荼羅を譲っていただくことを勧める日蓮宗のお寺もあるので、ご本尊の購入前には必ず確認しておきましょう。
最近では仏壇の大きさや予算などの都合で、仏像よりも掛け軸を安置する人が増えています。
掛け軸は、仏具店やネットショップ等で大抵3幅セットになって販売されています。
昨今の住宅事情や生活スタイルが一昔前とは変わり、私達の家の中での仏壇の存在も変化しつつあります。
仏壇に仏像を祀るのか掛け軸にするのかも、ご本尊ではなく位牌を安置して供養するのかも、現代では各自の考えや生活によって決めることなのかもしれません。
最も大切なのは、仏壇にただご本尊を祀るという事ではなく、祀ったものに私達がどう向き合うかという事なのではないでしょうか。